「現場に来てくれ」「任せます」…名バイプレイヤー「大杉漣さん」を悶絶させた“世界的名匠”のシンプルすぎる指示

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とことん優しい人

 大杉の言葉が強烈に印象に残ったのには理由があった。話を伺ったのは01年に住宅ローン8000万円で建てたというご自宅だが、拙宅も同じエリアにある。渋谷からタクシーで帰る時は劇中と同じようなルートを通る。「リスとトラで動物園じゃあるまいし」と言いながら車から見える風景をリアルにイメージでき、とても身近なシーンに思えた。

 大杉を恩人と慕っていた津田寛治(59)は「ソナチネ」で映画デビュー、「キッズ・リターン」にも出て、北野作品に数多く出演している。

 大杉と「ソナチネ」の現場で一緒だった時のこと。セリフはメモ書き程度をチラッと見せられただけ。不安でガチガチになっていた津田に「大丈夫」と声をかけてくれたのが大杉だった。以来、「119」(94年公開)の竹中直人監督(68)に引き合わせ、事務所も紹介したりしてくれた。

 津田は「もし大杉さんがいなかったら、映画の世界で生き残れたかわかりません。僕にとっては先行きが見えない時に正しい方向へ導いてくれる灯台のような存在」と語った。

「300の顔を持つ」大杉は、自分にはどんなに厳しい要求を突きつけられても、他人にはとことん優しい人だった。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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