「どこが面白いのかさっぱりわからない」という視聴者も…23歳の「R-1」新王者、非凡なセンス

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歌が上手くて表現力あり

 そこで、芸人たちはそれぞれの感性でセオリーをわざと逸脱して冒険をしようとする。あえて外す、ということを試みるのだ。ただ、この外し方にも絶妙なさじ加減が求められる。完全に大きく外れるようなことをすれば、笑いを取ることはできない。真ん中からは外れつつ、絶妙なコースを突かなければいけない。友田はこの点で非凡なセンスを見せていた。

 1本目の「辛い食べ物節」も、2本目の「ないないなないなない音頭」も、歌詞の中身はほぼ空っぽに等しい。何も言っていないのと同じくらい情報量のない歌詞なのだが、その外し方が見事だった。

 その上、彼は歌が上手くて表現力がある。何を考えているのかわからないキャラクターを演じていたので、それが楽曲そのものの面白さを増幅させていた。

 ファイナルステージに進んで彼と最後まで優勝を争ったハギノリザードマンと田津原理音は、2本目では広い意味での「あるあるネタ」を演じていた。受け手の共感を誘うようなタイプのネタだったのだ。どちらも文句なしに面白く、わかりやすいネタだった。

 一方、友田のネタは決してわかりやすくはない。「どこが面白いのかさっぱりわからない」と思った視聴者もいたかもしれない。彼のネタは共感をベースとしていないため、万人にウケるわけではない。

 ただ、プロの審査員はそんな友田のネタを高く評価した。より難しいことをやって笑いを取っているというところが加点要素になったのかもしれない。

 23歳の若さでここまで質の高いパフォーマンスを見せた友田オレには驚くほかはない。年配の芸人の活躍が目立つピン芸人の世界で、久しぶりにフレッシュな感性を備えた若きニュースターが誕生した。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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