「どこが面白いのかさっぱりわからない」という視聴者も…23歳の「R-1」新王者、非凡なセンス
歌が上手くて表現力あり
そこで、芸人たちはそれぞれの感性でセオリーをわざと逸脱して冒険をしようとする。あえて外す、ということを試みるのだ。ただ、この外し方にも絶妙なさじ加減が求められる。完全に大きく外れるようなことをすれば、笑いを取ることはできない。真ん中からは外れつつ、絶妙なコースを突かなければいけない。友田はこの点で非凡なセンスを見せていた。
1本目の「辛い食べ物節」も、2本目の「ないないなないなない音頭」も、歌詞の中身はほぼ空っぽに等しい。何も言っていないのと同じくらい情報量のない歌詞なのだが、その外し方が見事だった。
その上、彼は歌が上手くて表現力がある。何を考えているのかわからないキャラクターを演じていたので、それが楽曲そのものの面白さを増幅させていた。
ファイナルステージに進んで彼と最後まで優勝を争ったハギノリザードマンと田津原理音は、2本目では広い意味での「あるあるネタ」を演じていた。受け手の共感を誘うようなタイプのネタだったのだ。どちらも文句なしに面白く、わかりやすいネタだった。
一方、友田のネタは決してわかりやすくはない。「どこが面白いのかさっぱりわからない」と思った視聴者もいたかもしれない。彼のネタは共感をベースとしていないため、万人にウケるわけではない。
ただ、プロの審査員はそんな友田のネタを高く評価した。より難しいことをやって笑いを取っているというところが加点要素になったのかもしれない。
23歳の若さでここまで質の高いパフォーマンスを見せた友田オレには驚くほかはない。年配の芸人の活躍が目立つピン芸人の世界で、久しぶりにフレッシュな感性を備えた若きニュースターが誕生した。
[2/2ページ]