TENGA登場から20年…いまやコンビニでも買える「セクシャルウェルネス」市場の大成長

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立役者ドンキ、驚きのインバウンド需要

 セクシャルウェルネスグッズと小売店を語るうえで避けられないのが、何と言っても市場を牽引するドン・キホーテの存在だ。

 専用の販売コーナーを設置している店も多いことからも、ドンキが圧倒的な販売力を誇っていることが窺える。一般顧客が売り場に間違って入って行かないようのれんの目隠しを設置するなど各店ごとに工夫しているが、こうした対応は他の小売店においても重要だ。

 都道府県ごとの条例によるが、セクシャルウェルネスグッズは「有害がん具類」とみなされることが少なくない。ゆえに出店エリアの条例を鑑み、「18禁」の対象商品として販売スペースが見えないようにすることは重要だ。メーカー側も販促資材を導入するなどの対応を行っており、このような地道な取り組みが市場拡大の要因になっている。

 さらに、インバウンド需要も市場拡大に大きく影響を与えている。

 TENGAの販売状況を見ると、ドンキをはじめとするインバウンド購買率の高い小売店では、外国人顧客による購入比率が実に50%前後に達しているという。

 日本のセクシャルウェルネスグッズは、世界市場でも高いシェアを誇っている。高い品質と技術力に加え、ポップなデザインによって「性のタブー」を軽減している事も、海外の幅広い層に指示されている理由となっているのだろう。

 こうしたセクシャルウェルネスグッズの好調は、「性」に関する考え方が時代背景により変わってきているのも理由だろう。私がローソンの店長をしていた1990年のバブル期では、コンドームは紙袋に入れて中身を見えなくして販売していたし、店頭に並べずカウンター内に陳列し希望客にだけ販売していた(これは万引き対策の意味合いもあったが)。街中にはコンドーム専用自販機も多くあった。そうした状況は1990年後半ぐらいから代わり、今ではカップルでコンドームを買いに来て、女性が支払う光景も当たり前になっている。

欧米では男女逆転

 日本においてセクシャルウェルネスグッズは、まだまだ男性の購買の比率がまだまだ多い。だが、欧米においては女性の使用構成比が6割と男性よりも多くなっている。女性が自らの欲求を隠さないこと、自身の快感を追求することを受け入れる社会環境がその理由で、また革新的ともいえるオシャレなデザインの商品の増加も販売を後押ししている。

 日本でも、俳優・モデルの水原希子が女性向けセルフプレジャーブランド「iroha」のアンバサダー3期目を迎え、商品の共同開発も行っている。家電店エディオンではフェムテックコーナーを設けている店舗もあり、女性向けのセクシャルウェルネスグッズも、今後国内市場が大きく伸長しそうだ。

 サントリーからは、GABA&アルギニン&亜鉛が独自配合された「menphys」というドリンク剤が発売されている。商品説明を見ると「芯から強く。心と体に栄養を」「20-30代男性の約4人に1人が大事な時に力を発揮できない。そんな悩みますに向き合いたいと生まれたドリンク」と書かれているから、これもセクシャルウェルネス商品のひとつといえるだろう。「イライラ期、心と体に栄養を。」を謳う女性向け「menphys」もあり、そちらはアルギニンの代わりに大豆が配合されている。

 三大欲求のひとつ「性」に根ざしたセクシャルウェルネス市場は、売り場展開、商品とともに今後も大きく進化するはずだ。その変化に消費者が呼応する形で、市場全体がさらに活性化していくことが期待される。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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