TENGA登場から20年…いまやコンビニでも買える「セクシャルウェルネス」市場の大成長
“こっそり買うもの”だったのは昔のこと……。現在、日本のセクシャルウェルネス市場は大きな盛り上がりを見せている。背景にあるのは、ブランドの確立、小売店の積極的な展開、そしてインバウンド需要の拡大だ。かつては限られた層に支えられていたが、いまや多様な消費者に受け入れられ、新たな成長フェーズへと突入している市場の今を、消費経済アナリストの渡辺広明氏がレポートする。
***
【画像】20年で多様なランナップが揃った「TENGA」 女性向けセクシャルウェルネスグッズも展開
人間の三大欲求は、食(生存欲求)、睡眠(休息欲求)、そして性(種族保存欲求)。消費市場において、「食」はメインストリームとしてビジネスの根幹を担っており、「睡眠」も、関連商品の買い上げ頻度こそ低いものの、生活に欠かせない。直近では、大谷翔平も使う西川のAiRなど、マットレスパッド需要が高まっている。
そして「性」においても、セクシャルウェルネスグッズ、いわゆる性的観点から心身の健康維持・増進を目的とする商品の市場が急伸長している。フェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO」によると、世界の市場規模は2025年までに約4兆円規模に達すると予想されるほどだ。
業界の雄TENGA
これまでセクシャルウェルネスグッズは、一人暮らしのユーザーを対象とするネット通販や専門店が販売の中心だった。だが近年は、一般小売店での販売も珍しくなくなってきている。その筆頭がセルフプレジャーアイテムであるTENGAだ。「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」を企業理念に掲げ、今年で発売20周年を迎えた。
「男性にとって適度な自慰行為は、EDの予防、前立腺がんのリスクを低下させるなどのメリットがあります。さまざまな理由によりパートナーらとの行為が叶わないユーザーだけでなく、幅広い層からご支持いただいています」
と解説してくれるのは株式会社TENGAの広報・橘涼太さんだ(以下、TENGAに関する情報は橘さんへの取材に基づく)。
一般小売店ではドラッグストアとの親和性が高い。全店展開でないものの、ウエルシア、ダイコクドラッグ、スギドラッグ、マツモトキヨシ、ココカラファイン、ツルハドラッグなど大手ではほとんど取り扱いがある。そのほかイオン、イトーヨーカドー、ライフのスーパーマーケットなど、実に1万2,300店以上の幅広い小売店で取り扱いがある。販売構成比はEC(電子商取引)44%に対し実店舗56%と小売店が牽引しており、従来のアダルトグッズのイメージを覆すような状況となっている。
コンビニでも各チェーンで様々な実験がされている。たとえば沖縄のファミリーマートでは、120店舗以上ですでにTENGA関連商品が展開されており、販売実績も売上利益ともに合格点レベルだというから、他エリアの拡大も視野に入ることだろう。
[1/2ページ]