正念場を迎えた「前田健太」に集まる熱視線…完全復帰が「投手・大谷翔平」復活の試金石に
投手・大谷復帰のサンプルに?
その理由は、2季ぶりの投手登板が予定されているドジャースの大谷翔平(30)に注目が集まっていることと関係している。「投手として、かつてのように力でねじ伏せる投球ができるのか」と米メディアは関心を寄せているのだという。大谷と同じトミー・ジョン手術を受け、昨季、本格的な投手復帰を果たした前田を分析することで、大谷の今季の投手成績を詳細に予想しようとしているからだ。
「前田がトミー・ジョン手術を受けたのは21年9月でした。前田は1回目で、大谷は2度目という違いこそありますが、術式内容が同じなんです。自身の靭帯とインターナル・ブレース(人工靱帯)を組み合わせたもので、その効果として、復帰までの期間が短くなることと、インターナル・ブレースを加えることで患部が強くなると、一般的には言われていました」(前出・同)
インターナル・ブレースを使った手術を受けた日本人投手は、前田が初めてだ。「同じ日本人投手」なので“大谷復帰のサンプル”として見られるのは仕方ないことかもしれない。しかし、前田の昨季の成績を見る限り、「第一線の戦力」としての復帰はできなかった。
前田は昨季、17試合に先発登板しているが、試合序盤で失点を重ねることが多かった。とくにシーズン前半戦の先発登板16試合でクオリティ・スタート(6回を3失点以内に抑える)を達成できたのは、僅か2試合だ。
また、MLB公式のデータサイト「Baseball Savant」の球種別の被打率を見てみると、フォーシームが3割5分9厘、スライダーが3割1分となっていた。フォーシーム、スライダーは、前田にとって配球を組み立てるうえで軸となる球種でもあっただけに、数値でも苦しい投球が続いていたことが分かる。
投手に復帰した大谷も、前田と同じ道程を繰り返すのか……気になる情報もある。前田、大谷の執刀医を務めたニール・エラトロッシュ医師がロサンゼルス・タイムズ(電子版)の「医療・医薬欄」でインタビュー を受けていた。同医師はトミー・ジョン手術を考案したフランク・ジョーブ医師も認めた “後継者”で、ドジャースのチームドクターの肩書きも持っている。興味深かったのは、2度目の同手術を受けた投手の復帰に関する発言だ。
「再手術からの復帰は、歴史的にはあまり良い実績を持っていません。復帰例は少ない」
同医師は「リハビリのプログラムも進歩している」とし、それを根拠に「大谷はリハビリに真剣に取り組み、私も復帰へのプロセスを完全に信じています」とも語っていたが、投手の靭帯損傷のケガがなくならないことについて、こうも警告していた。
「競技レベルが上がり、身体を酷使することで若いうちから身体を痛めてしまうんです。(近年の投手の練習は)球速や回転率を上げることが注目され、重いボールを使った練習など、より体に負担の掛かる投げ方が広まりました。投手たちは全体的に見て、より優れた球を投げるようになりましたが、一方でケガのリスクも増しました。靭帯が痛み、骨が変形する」
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