僕は「不倫の孫」で妻は「不倫シングルマザー」のはずだった… 真実を知って40歳夫が身につけた新習慣

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なじみの女性は作らない

 未明に帰宅すると、トイレに行こうとしていた息子と鉢合わせした。「おとうさん、ありがとう」と息子はいった。息子は彼が帰るまでまんじりともしていなかったのかもしれない。

「生まれて初めて、オレはこの子を大事にしたいと思いました。こいつだけは傷つけたくない、と。優美のことはよくわからない。というか大人の考えることは裏表がある。でも息子だけは、まあ、結局、本当の息子じゃないんだけど、それでも彼のいうことには嘘がないと思える。一緒にいられるのはあと数年かもしれないけど、彼とともに僕も大人になろう。そう思ったんです」

 優美さんに心許したわけではないが、3人の生活は今も続いている。優美さんは特に卑屈になることもなく、淡々と生活し、淡々と勇斗さんにも話しかけてくる。メンタルの強い優美さんに負けて、勇斗さんも少しずつ話をするようにはなった。ただ、優美さんに離婚の意志があるかないかはわからない。離婚するために夫に連絡をとるのが嫌なのかもしれないが、真相はわからない。

 悶々とすると、勇斗さんははときどき息抜きに風俗に通う。なじみの女性は作らないのが彼の中での義理立てのようなものだという。息子が大きくなって独立したらどうなるかはわからない。

「自分が何を大事にして、なにに我慢ができず、なにを許せるのか。ようやくそういうことがわかってきたんです。遅いけど、このあたりが僕の精神的な人生のスタートなのかもしれない。そんな気がしています」

“普通の生活”も“まっとうな人生”も、なにが基準なのかはわからない。ただ、勇斗さんはようやく、無意識に封印していた心や感情を自ら動かし始めたのかもしれない。
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 40歳にして「自身」を開放し始めたともいえる勇斗さん。彼の心を閉じ込めるに至った「妙な育ち方」を送った幼少時代については【前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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