僕は「不倫の孫」で妻は「不倫シングルマザー」のはずだった… 真実を知って40歳夫が身につけた新習慣
ところが…
戸籍謄本をとってみたら、勇斗さんの戸籍に結婚の記載がなかった。確か婚姻届は優美さんが出してくれたはずだった。その晩、彼は妻にどういうことなのかと聞いた。妻は泣きながら、不倫をして息子を産んだのは事実だが、当時、自分はすでに結婚していたと話した。それが原因で家を出たのだが、夫は離婚に応じてくれず、不倫相手には逃げられたというのが真実だった。
「だからあなたとの婚姻届は出せなかったと。彼女と真剣につきあって5年、結婚して6年。オレはずっと騙されていたのか……。『こんなに長く生活しているのだから、結婚しているのも同じことでしょう』と彼女はしれっといいました。騙されていた僕の気持ちはどうなるというと、騙していたわけではないって。でも僕はショックが大きくて。優美は『あなたも浮気くらいしてもいいから』ともいいました。彼女の倫理観がわからなくなった。人はそんなに簡単に浮気なんかしないよ、きみの価値観はおかしい、愛をなんだと思ってるんだと僕は怒鳴ってしまいました」
そう言いながら、彼は「オレに愛なんてわかるはずもないのに」と心の中で自分を嘲っていた。だが直感として、信じていた愛が穢されたという思いは強かったという。優美さんにも彼が本心から怒っていることは伝わった。「ごめんね。私たち、出ていくわ」とつぶやいた。
「彼女たちに出て行かれたら僕の生活はどうなるんだ、これまで家族のためにと思ってがんばってきたのに。そう思うと出て行かれたくなかった。だからといって、今までと同じように生活できるとも思えなかった。その場ではなにも考えられず、家を飛び出しました」
ふと目に入った看板に
飛び出して歩き始めたのはいいが、行くあてなどなかった。実家もなければきょうだいも親戚もいないのだ。つくづく自分が孤独だと感じながら夜風に吹かれた。
その日は駅近くのビジネスホテルに泊まった。翌日、早番で仕事へ行き、どうしても帰宅するのがおっくうになっているところへ遅番がひとり急病だと連絡があったので代わりにシフトに入った。深夜まで働き、職場近くのカプセルホテルに泊まった。
「次の日、息子から電話がかかってきた。職場近くまで来たので会えないかって。会って話すと、息子は『おかあさんを許してやってほしい』って。『あの人は愚かものだけど、おとうさんへの気持ちは本物だと思う』と。彼が小さいころから優美は、たびたび浮気していたようです。もともと浮気者で、戸籍上の父親もそれがわかっていたはず。息子は『でも僕のことは自分の子だと信じていたみたいで、そうではないとわかったとき父親の忍耐が限界に来た。でも父はまだいつかおかあさんが自分のもとに戻ってくると信じている』と言っていました。ただ、優美は、僕が帰ってくることはないと息子に告げていた。オレはきみと本当の親子になりたかったよといいました。息子はうれしそうに『オレは本当の親子だと思ってるよ』とニコッと笑った。その笑顔に負けて、明日には帰るよと言うしかなかった」
その日、疲れた体と心を引きずってまた深夜まで働いた。カプセルホテルに泊まろうと歩いていると、風俗店の看板が目に入った。呼び寄せられるように店内に滑り込んだ。
風俗は初めてではなかったが、優美さんと知り合ってからは疎遠になっていた。だがその日は、どうしても人肌が恋しかった。
「なにもしなくていいからずっと手を握っていてほしいと女の子に頼みました。そのまま30分くらい僕は寝てしまったみたいで、目覚めるとその子は律儀に手を握っていてくれた。サービスを受けて、身も心も少しすっきりして、ようやく自宅に帰る気になりました。こうやって自分を慰めつつ、生きていくのも可能なんだなと思った」
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