備蓄米を放出しても「夏にはコメ不足」に陥るリスク…「令和の米騒動」再来で“参院選”はどうなる?
第1回【ついに備蓄米の“入札”スタート…それでも「コメの価格が下がらない」と囁かれる理由 ネット上では「高値入札なら価格も高止まりでは?」とのツッコミも】からの続き──。入札が実施された備蓄米は3月末には店頭に並ぶと見られている。だが、コメの価格を押し下げる働きは限定的だと予測する専門家は少なくない。(全2回の第2回)
***
【画像】コメの“不都合な真実”を明らかにする衝撃データ コメ消費を減らしているのは「若者」ではなく意外すぎる「世代」だった
さらに夏になると昨年と同じようにコメ不足とコメ価格の高騰が起きるのは確実だとされる。担当記者は「農林水産省は23万トンの“消えたコメ”が原因で価格が高止まっていると発表していますが、これを疑問視する専門家は相当な数に達します」と言う。
「そもそも農水省はコメの作況や流通状況を充分には把握できていない、そのため不足しているコメは23万トンではなく、40万トンを超えていると指摘する専門家もいます。これでは備蓄米を15万トン放出しても“焼け石に水”でしょう。さらに消費者にとって不安なのが、昨年のコメ不足で外食産業などが秋に収穫された新米だけでなく、今年秋の収穫分もすでに確保しているという事実です。もともと夏は前年の新米と今年の新米の端境期にあたり、店舗に出回る量が減る時期なのです。昨年の夏にコメ不足が発生した原因でもありますが、今年の夏も同じことが起きると言われているのです」
再び夏にコメがスーパーから消えたり、5キロが5000円台に急騰したりすれば、多くの国民は頭を抱えてしまうだろう。そして与党である自民党と公明党にとっては最悪のタイミングになるが、参議院議員の改選組は7月28日に任期満了を迎える。
「今回のコメ高騰は農水省の不手際で事態が悪化したと国民の多くは認識しています。昨年の春に比べてコメの価格が2倍に達しても、当時の坂本哲志農水相は『新米が出回れば価格は落ち着く』と繰り返したわけですが、むしろ価格は上昇しました」(同・記者)
コメ高騰と参院選
現在の江藤拓農水相が備蓄米の入札実施を発表したのは2月だったが、「昨年の早い段階で実施していれば、もっとコメの価格を押さえ込めたはずだ」との批判は根強い。こうした不満の声が参院選で自民党と公明党に逆風として吹く可能性があるわけだ。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「今のところ永田町では『今回の参院選が政変の火種になる可能性は低い』との見方が一般的です」と指摘する。
「ポイントは自民党も公明党も非改選の議席数を“貯金”していることです。例えば2022年の参院選で自民党は議席を8伸ばし、63議席を獲得しました。参院の過半数は125議席で、自公の非改選議席は75議席もあります。差し引き50議席を確保すればよく、自民党の改選議席は52議席ですから、40議席台で過半数を維持できる可能性があるわけです。そのため『自民党に逆風が吹いても効果は限定的』と玄人は予測するわけですが、参院選は予想不能な“突風”が吹く場合があります。往々にしてプロの議席予測は外れてきたことには注意が必要でしょう」
参院選で“突風”が吹く原因を伊藤氏は「参院選で有権者は“遊ぶ”」と表現する。政権交代も起こりうる衆院選の場合、有権者は“真面目”な投票行動を選択する。ところが参院選の場合はミニ政党や芸能人の立候補者に投票することも珍しくない。
[1/2ページ]