ついに備蓄米の“入札”スタート…それでも「コメの価格が下がらない」と囁かれる理由 ネット上では「高値入札なら価格も高止まりでは?」とのツッコミも
3月10日、政府は備蓄米を放出するための入札を開始した。専門家は3月末には店頭に並ぶと見ているが、消費者にとって最大の関心事はコメの値段が下がるかどうかだ。2月に放出が決まった際、「いわゆる“転売ヤー”は貯め込んでいるコメを手放すに違いない」といった希望的観測が流れたものの、コメの価格は今も高止まりが続いている。そして数こそ多くないが、備蓄米に関して興味深い指摘がXに投稿されている。(全2回の第1回)
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【画像】コメの“不都合な真実”を明らかにする衝撃データ コメ消費を減らしているのは「若者」ではなく意外すぎる「世代」だった
何しろ昨年の春までコメは5キロ2000円から2500円で買うことができた。ところが夏になるとコメそのものが店頭から姿を消し、ピーク時は5キロ5000円まで上昇。備蓄米の放出が発表されてからは5キロ4000円から4500円で売られている──都市部にお住まいの方なら、こんな価格の上下動を経験したに違いない。
そもそも全国の消費者は生鮮食料品を筆頭とする物価の高騰に苦しんでいる。高すぎて困っているのはコメだけではない。備蓄米の放出で5キロ2500円から3000円に下がってもらわないと、家計のやりくりが非常に厳しいという人も少なくないはずだ。
ところが、どうやら備蓄米を放出しても「コメの価格は下がらない」という結論は避けられないようなのだ。担当記者が言う。
「農林水産省の調査によると昨年、新米の収穫量は前年から18万トン増えたそうです。ところが今年1月にJAなどの大手業者が入手したコメの量を、前年同月と比較してみると不足が明らかになりました。最初は21万トンと発表され、後に23万トンに修正されましたが、これを農水省は“消えたコメ”と位置づけ、コメ高騰の原因だと断言しました。要するに投機目的の転売ヤーが23万トンのコメを不当に買い占めたと非難したわけですが、この分析自体に専門家から異論が出ています」
幻の転売ヤー
順序だてて考えみよう。まず、「前年より18万トン収穫量が増えたのに、前年より23万トン足りない」となると、本当の不足分は41万トンだろう。
だが農水省は「投機が原因で23万トンのコメが流通で滞っている。備蓄米を15万トン放出すれば解消されるだろう」と政策を決定してしまった。本当に足りないのは41万トンなのだから、15万トンでは半分にも満たない。
ちなみに41万トン説に信憑性があると考えられるのは、農水省が発表した「1月末のコメ民間在庫量」を挙げることができる。前年同月比で44万トン少ないことが明らかになっているのだ。
「コメ不足の実態が明らかになるにつれ、少なからぬ専門家が『コメを買い占めたという転売ヤーは、農水省が作りあげた幻の存在ではないか』と疑問を呈しています。何しろ現在のコメ農家はJA以外の販路を確保しています。さらにコメの高騰で外食産業が『自分たちのコメは自分たちで買う』と確保に動きました。農水省は公式サイトに『日本人のコメ消費量は796万6000トン』と紹介しています。うち“消えたコメ”の割合は2・8%に過ぎません。コメ農家がネットで直販する動きも盛んで、農水省が捕捉できないコメの流通は増える一方なのです」(同・記者)
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