創業家の「長女」「次男」にセブンイレブンMBO失敗の本質が… 「育ちの良さからか、剛腕さに欠ける」

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創業家側の“二つの問題”

 伊藤忠は傘下に同業のファミリーマートを抱えるが、同社の岡藤正広会長は撤退の理由を「(創業家提案の)スキームに多少の無理があった」と語っている。

 ただし、前出のファンド関係者によれば、

「集めるお金が9兆円と巨額だったため、プレイヤー(出資者候補)が多くなり、スキームが複雑化したのは事実。けれど関係者の間でささやかれている失敗の本質は、創業家側の二つの“問題”です」

 と明かす。尚子氏と順朗氏がMBOを画策したのは「セブンを守る」との思いからだが、

「本来であれば国が関与してもおかしくないスケールの買収案件であり、だからこそ強いリーダーシップが求められた。しかし順朗氏は“何があっても、私が絶対にまとめ上げる”といった気概を最後まで見せることはなかったそうです。出資候補から脱落者が出ても、順朗氏が揺るがない意志を示せば、結果は違ったかもしれない。でも育ちの良さからか、そういった突破力や剛腕さが彼には欠けていたといいます」(同)

毅然とした態度で人事案をはねつけた尚子氏

 意志の強さという点では、意外にも尚子氏に期待する声の方が多くあったそうだ。かつてセブン会長だった鈴木敏文氏が子会社社長(当時)の井阪氏を解任する人事案を創業家に提案した際、毅然とした態度ではねつけたのも尚子氏だったとされる。

「尚子さんは社会貢献活動に積極的で、雅俊氏が設立した財団で理事長も務めていますが、肝心のビジネスの実務経験はありません。今回も、スキームが瓦解するのを止めるすべを持ち得なかったと指摘されています」(前出のファンド関係者)

 その尚子氏の自宅を訪れ、取材を申し入れたが、「お話しすることはございません」と答えるのみだった。

 気になる今後の展開について、

「井阪氏の後任には、社外取締役で、買収提案を議論する特別委員会委員長のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏が起用される見込みです。実現すれば、初の外国人トップとなりますが、クシュタールは新体制を“単独経営を続ける意思表示”と受け取っている。そのため両者の攻防は今後、さらに激しさを増すと予想されています」(前出のデスク)

 買収を諦めていないクシュタールの魂胆を、前出のファンド関係者がこう説明する。

「表向きは“友好的な合意を目指す”との声明を出していますが、敵対的TOB(株式公開買付け)のカードを捨てたわけではない。実はクシュタールが欲しいのは“セブンの北米事業で、日本市場には関心がない”とは以前から指摘されていました。TOBをチラつかせつつ、セブンとテーブルの下で“裏交渉”を行う用意もあると聞いています」

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