ドイツは「トランプショック」に対応できるか 「債務ブレーキ」ついに改正なら通貨ユーロが危機に晒される可能性

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通貨ユーロの価値を損なう危険性

 ドイツの財政拡大路線が欧州通貨ユーロに及ぼす悪影響も心配だ。

 欧州連合(EU)は6日、防衛力を強化するため、1500億ユーロ(約24兆円)の資金供給の枠組みを創設することで合意した。資金調達の手段として共同債の発行が検討されているが、市場はこれを嫌気し、欧州国債に対する売り圧力が強まっている。

 ユーロ圏には欧州中央銀行による金融政策があるが、通貨の価値を支える財政政策が存在しないため、発行される通貨には制度上の弱点がある。

 この問題をオフセットするため、ユーロ圏経済の大黒柱であるドイツが財政規律を重んじることで通貨価値の安定に努めてきた経緯がある。前述の債務ブレーキも、リーマンショック後の混乱を回避し、通貨ユーロの価値を安定させる目的で当時のメルケル首相が講じた措置だ。2010年に起きたユーロ圏の債務危機の際、通貨ユーロは存続の危機に追い込まれたが、これを救ったのはドイツの債務ブレーキだったと言われている。

 このことからわかるのは、債務ブレーキの見直しは通貨ユーロの価値を損なう危険性をはらんでいることだ。

 折しもトランプ政権の失策のせいで米国経済が急減速するなど、国際経済が再び不調に陥ることが危惧されている。通貨ユーロはこの苦難を乗り切ることができるのだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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