ドイツは「トランプショック」に対応できるか 「債務ブレーキ」ついに改正なら通貨ユーロが危機に晒される可能性
財政拡大路線に市場は歓迎ムード
債務ブレーキの見直しを巡る状況は流動的だが、本コラムではドイツ新政権が進める財政拡大路線のメリット・デメリットについて考えてみたい。
市場は「次期政権が国防費を大幅に拡大することによりドイツで冷戦終了後最大の国防投資ブームが訪れる」と歓迎ムードだ。株式市場では防衛関連株が相場を牽引しており、ドイツ最大の軍需・防衛企業であるラインメタル株は、今年に入ってからの上昇率が約9割に達している。
格付け企業の評価も好意的だ。S&Pグローバル・レーティングは5日、ドイツの防衛費とインフラ支出の大幅増額計画は最上位の「AAA」格付けにとってプラスになるとの見解を示した。ドイツの債務残高の対GDP比が昨年末の63%から2029年末には72%にまで増加するというデメリットはあるものの、財政拡大がもたらすドイツ経済の基盤強化というメリットの方が大きいというわけだ。
米ゴールドマン・サックスも、ドイツの成長率は押し上げられると予測している。
不動産バブルが崩壊すればドイツでも金融危機
次期政権の財政拡大路線は良いことずくめのように思えるが、長期金利が急上昇するなど懸念すべき現象も起きている。
欧州債券市場では、ドイツ国債が過去35年で最大の下落を記録し、10年物国債利回り(長期金利)が16年ぶりの高水準となった。
財政悪化懸念を反映した「悪い金利の上昇」だ。長期金利の上昇は低迷するドイツの不動産市場にとってさらなる打撃となる。
独ファンドブリーフ銀行協会によれば、ドイツの昨年の商業用不動産価格は前年に比べて5.4%下落し、4年連続のマイナスとなった。住宅用不動産価格は昨年、3年ぶりに上昇に転じたが、ローン金利の上昇で再び軟調になるだろう。
日本の例にならえば、不動産バブルが崩壊すれば、ドイツでも金融危機が起きるリスクが生じる。そうなれば、ドイツ経済が3年連続のマイナス成長になるのは確実だ。
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