ドイツは「トランプショック」に対応できるか 「債務ブレーキ」ついに改正なら通貨ユーロが危機に晒される可能性

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ついに「債務ブレーキ」改正へ

 ドイツ連邦議会(下院)選挙で第1党となったキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は3月8日、社会民主党(SPD)と連立政権樹立に向けて正式交渉に入ると発表した。

 欧州とトランプ米政権との溝が深まっており、CDUのフリードリヒ・メルツ党首は4月20日の復活祭までに連立政権を発足させたい考えだ。

 次期首相への就任が有力視されるメルツ氏は、CDU・CSUとSPDの議員連盟が3月13日までに、国内総生産(GDP)比1%を超える防衛費を「債務ブレーキ」の対象から外す内容のドイツ基本法(憲法に相当)改正案を連邦議会に提出するとの方針を明らかにしている。

 2009年に追加されたドイツ基本法第109条第3項は「原則として、借り入れ以外の収入によって予算を均衡しなければならない」と規定しており、2016年から連邦政府の借り入れ(財政赤字)は名目GDPの0.35%以下に抑える形で運用されてきた。

 メルツ氏は総選挙前、債務ブレーキの改正に否定的な考え方を示していた。トランプショックを受けて、考えを改めた形だ。

新議会の開始前に基本法改正を狙う

 だが、メルツ氏は、3月25日に始まる新議会を待っているわけにはいかない。

 基本法改正には連邦議会議員の3分の2の賛成が必要だが、新議会の議席は債務ブレーキの見直しに反対するドイツのための選択肢(AfD)と左派党が3分の1以上を占めることになるからだ。

 メルツ氏は任期切れが迫る現在の議会で基本法を改正しなければならなくなっている。これに待ったをかけているのが緑の党だ。

 基本法改正には緑の党の賛成が不可欠だが、同党の関係者は10日、「メルツ氏の計画が承認される可能性は日ごとに低下している」と警告を発した。基本法改正に伴い設立が計画されているインフラ投資基金(約80兆円規模)に気候変動対策が含まれていないというのがその理由だ。

 これに対し、メルツ陣営は、気候変動対策を盛り込むことで緑の党と合意する構えだ。

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