トランプ大統領が「日米安保」に不満表明も…日本の「岩盤保守層」が“トランプ支持”を続けるのはナゼか 専門家は「“ロンヤス”が理想像のまま時間が止まっている」

国内 政治

  • ブックマーク

次の大統領が誰でも同じ

 フランクリン・ルーズベルト大統領など、民主党は伝統的に中国大陸を重視してきた。一方の共和党は大陸の共産党政権を敵視し、日本、韓国、台湾を重視した……とされてはいる。しかし、これは1940年代から70年代までの世界情勢だろう。

「かつての共和党と今の共和党は違います。例えば民主党よりリベラルな見解を持つ議員も珍しくありません。“反共でタカ派、反中で親日”という共和党の政策は80年代で終わったと見るべきです。そして岩盤保守が理想化する日米関係は、ロナルド・レーガン大統領と中曽根康弘首相の“ロンヤス”なのです。第1期のトランプ大統領と安倍首相の関係を評価したのも、“ロンヤス”を想起したからです。しかし今後、“ロンヤス”的な日米関係が樹立されることはあり得ません。岩盤保守の対米外交は80年代で止まり、時代遅れのものになったと言えます。それでも彼らはトランプ大統領を支持し、熱烈な“ラブレター”を送っているわけですが、これが片想いであることは誰が見ても間違いありません」(同・古谷氏)

 トランプ大統領は2期目だ。憲法を改正しない限り、アメリカで大統領の3選は憲法で禁止されている。「あと4年の辛抱だ」と、とにかくトランプ大統領の退任までやり過ごすべきという識者も存在するが、古谷氏は否定的だ。

注目すべきは尖閣防衛

「次が誰であっても、『軽武装・重経済・日米安保堅持』という吉田ドクトリンが通用する大統領ではないでしょう。他国のためアメリカ人兵士が戦死し、アメリカ国民が精神的な傷を負ったという歴史が、トランプ政権の外交政策に影響を与えていると言われています。しかしその傷はイラク戦争で生まれたものではなく、ベトナム戦争から始まっていたという視点は重要です。アメリカは70年代から深い傷を負い、だからこそ有権者は『もう世界の警察官は嫌だ』と孤立主義を支持しているのです。『極東有事が発生しても、アメリカは日本を助けない』という論点は年を追うごとに仮定の話ではなく、単なる事実として認識されていくはずです」(同・古谷氏)

 アメリカの変化により、軽武装・重経済・日米安保堅持の吉田ドクトリンと、それを理論的根拠とする岩盤保守の主張は崩壊したと古谷氏は見る。ならば新時代における対米外交の“一丁目一番地”は何に着目すべきなのだろうか。

「それは尖閣防衛でしょう。アメリカで新しい大統領が誕生するたび、日本の首相は訪米して『日米安保で尖閣を守ってくれますか?』と質問し、その回答が大きく報じられます。岩盤保守を標榜するメディアも同じですが、このことは何より、彼らが日米安保を信じていない証拠でしょう。生保も損保も担当者が変わることはよくありますが、そのたびに『この保険契約は今も有効でしょうか?』と質問する加盟者はいません。真の保守であれば、今こそ『尖閣は自衛隊だけで守る』ことを立脚点とし、新しい外交ビジョンを構築すべきです」(同・古谷氏)

新しいドクトリンの誕生

 古谷氏は憲法9条も含めて改憲の必要性を主張している。だが尖閣の防衛は文字通りの“専守防衛”のため憲法改正の必要はない。

「台湾もフィリピンも日本ほどはアメリカ軍に依存していません。それでも何とか中国の脅威に対抗しています。もし日本が『自分の国は自分で守る』という当たり前の国家理念を実行すれば、アメリカの大統領が替わるたびに『親中なのか、親日なのか』と気を揉む必要はなくなります。尖閣を原点とすることで、今のアメリカの実像が見えてくるはずですし、そこから自然に新しい“ドクトリン”が導かれます。時間の経過と共に破綻した岩盤保守、保守本流の主張を乗り越えられるのです」(同・古谷氏)

 関連記事【「ゼレンスキー大統領」を“独裁者”と呼び「プーチン大統領」と急接近…トランプ大統領“終戦圧力”の背景に「真の脅威である中国に専念したい」との思惑】では、“ウクライナ終戦”を急ぐトランプ大統領の胸中について報じている。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。