娘の「パパ、顔が怖い!」で目が醒めた…気がついたら泥沼に「オンカジ」の恐怖を体験者が自戒を込めて告白

国内 社会

  • ブックマーク

ネット上で簡単に見つかる

 昨年のM-1王者・令和ロマンの高比良くるま(30)が、オンラインカジノで賭博をした疑いで警察の事情聴取を受けたことをYouTubeで謝罪したのは2月15日のこと。くるまは賭博をした時期について、2019年末から20年末と告白した。刑法の単純賭博罪の公訴時効(3年)にかからない22年2月以前だったが、活動を休止している。

 この“オンカジ問題”はプロ野球界にも飛び火。いち早くオリックスが山岡泰輔投手(29)の過去のオンカジ利用を公表し、同投手は開幕前にもかかわらず活動を自粛することに。その後、日本野球機構(NPB)が全12球団に対し、所属選手や球団スタッフらで22年2月以降にオンラインカジノを利用した者は自主的に名乗り出ることを呼びかけるように要請した。その結果、計7球団で14人が名乗り出たことを発表。所属球団や実名は伏せられた。

 今月末の開幕を控え、騒動を収束させることが急務のようだが、

「自分はオンカジを一昨年末で止めていますが、まだ時効にはなっていません。しかし、ここまで騒動になってしまった今、自分のようにハマる人が出ないように、なぜオンカジにハマるのか、その“魔力”の中身を告白しようと思いました」

 そう話すのは、都内の会社員・山田武史さん(45=仮名)である。

 もともと、学生時代からスポーツ観戦が好きで、若いころは格闘技ジム通いも経験した山田さんは23年春先、インターネットでたまたま見つけたオンカジの広告が気になった。それは、あるオンカジサイト「X」の「スポーツベット」だったという。

「カジノというと、世間の方々はルーレット、バカラ、スロットマシンなど、テレビや映画で見る、ラスベガスのカジノを想像するかと思います。私もそうで、オンラインカジノと聞いても最初は興味がなかったのですが、よく見ると『スポーツベット』のページがあったんです」

 そこをクリックすると、国内外のプロ野球、サッカー、格闘技など、ありとあらゆるスポーツに賭けられることが分かったという。

「すぐに個人情報を打ち込んで、身分証の写真を送りIDを作成しました。賭け金の入金は銀行口座振り込み、オンライン決済、仮想通貨、カードでの支払いなどから選べましたが、私は銀行振り込みを利用しました。たしか、50ドル以上申し込めば20~30ドルほどのボーナスがもらえたので、キリのいいところで100ドル(当時のレートで約1万3000円、以下当時のレート)を振り込みました」

 最初に賭けたのは、23年4月29日に開催された格闘技イベント「RIZIN LANDMARK 5」だった。メインは朝倉未来選手、セミは斎藤裕選手の勝利を予想したところ、ことごとく的中した。

「100ドルの元手が、300ドル(約3万9000円)ほどに増えたんです。格闘技に関してはそれなりの知識があったんでうまく行きましたが、その後、迎えたゴールデンウィークで、日本のプロ野球に賭け始めたところ、すっかりハマってしまったんです。格闘技に比べて勝った金額は大したことがなかったんですが、デーゲーム・ナイトゲーム両方がある日は昼から夜までドキドキしていました。データを利用して、ベットの勝ちに結び付けられないかと思い、スポーツ紙を買い、さらにネットの情報も研究。一時期は、野球記者並みに詳しかったかもしれません」

気がつけば悪循環に

 ところで山田さんがハマった「X」とは、どのような仕組みなのか? 入手した情報をまとめると、拠点を構えているのはカリブ海にある小国ながら、タックス・ヘイブン(租税回避地)として知られるオランダ領・キュラソー。銀行振り込みの場合、1回で最低10ドル(約1490円)~最高5000ドル(約74万5000円)までの入金が可能。出金は3.5%の手数料を引かれて日本円で返金される。

「野球賭博については、週刊誌などでその仕組みを知っていました。ハンデ師が付けたハンデを基に、勝敗を予想するというものでしたが、『X』はそれだけではありません。まずは、どちらのチームが勝つかにそれなりに賭けておきます。そのうえで、『両チームの総得点』『両チームの総ヒット数』などなど、試合が終わった時点の数種類の賭け方がある。さらには、『この回の両チームの総得点』『この回の両チームのヒット数』と、試合中でも賭けることができるのです。もともと、仕事帰りに飲み屋によるのが好きで、最初はそこのWi-Fiを使って、自分が賭けている試合を動画配信サービスで見ていました。ところが、配信だと、わずかながら時間差があるので、リアルタイムの賭けでは追いつけない試合もあります。それもあって、家に帰ってケーブルテレビやBSで観戦するようにしたため、どんどんのめり込んだのです。『X』に賭けていることは会社の同僚にも家族にも話しておらず、そもそも、違法という認識すらありませんでした」

 山田さんは独身だった20年ほど前、パチンコ・スロットにのめり込んだ時期があったという。「X」にハマった時はすでに結婚して共働き。小学生の子どもが1人いたものの、会社の給与やボーナスなどである程度、自由に使える金はあった。

「パチンコ店に通っていた時代の経験もあり、負けても1日で5万円程度までと決めていました。ただ、プロ野球の賭けている試合で利益が出ても、まだ、やっている試合があったら、そちらの試合に賭けるという悪循環に。野球はほぼトントンで、週末に国内外の格闘技に賭けて利益を出して、平日は野球につぎ込むという生活になりました。そのうち、大相撲にも賭けられることを知り、1日5、6番程度の相撲にも賭けるようになりましたが、大相撲は賭けのオッズは1点台後半から2点台前半なので、あまりもうからなかったですね」(同前)

 3月7日の時点で問題の「X」を開いてみると、欧州のクラブチームナンバーワンを決める「UEFAチャンピオンズリーグ」、NBA、世界最大の総合格闘技団体・UFC、日米のプロ野球オープン戦などの各スポーツ、さらには、同8日に生放送されるピン芸人日本一決定戦「R-1グランプリ」の優勝者予想まで行われていた。その後、9日に初日を迎えた、大相撲3月場所の予想もスタートした。

次ページ:辞めるきっかけは娘のひと言

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。