「裕福な家庭にも、税金から支援金が」 私立高校無償化の“負の側面”を専門家が解説 「教育の過熱化につながりかねない」
「教育費の増加や教育の過熱化につながりかねない」
Xで5万2000フォロワーの教育系インフルエンサーで、塾講師として20年以上のキャリアを持つ東田高志氏が補足する。
「高校無償化をしても、中学受験のための費用や、私立中学の学費を払えない世帯の子供は中高一貫校には通えません。一方で今、東京にある230校の私立のうち、約50校は完全中高一貫校で高校からの募集はしていない。庶民が入れる私立高校がそもそも減っており、高校無償化の恩恵を平等に受けられる状況ではないのです」
慶應義塾大学総合政策学部教授で、教育経済学が専門の中室牧子氏もこう指摘する。
「最近、韓国のデータを用いて行われた経済学の研究では、周囲の家庭の教育支出に影響を受け、家計の教育費と教育熱がどんどん上がっていくことが示されています。“隣が塾に行かせるならうちも”“隣が私立に行かせるならうちも”というふうになるわけです。これが少子化の一因であることも明らかになっています。今回の無償化は、比較的高所得世帯の教育費に対する支援なので、こうした世帯が無償化で浮いたお金を追加的に塾や習い事に回すようなことがあれば、さらなる教育費の増加や教育の過熱化につながりかねません。結果的に親の教育費負担が減ったという実感を持てない改革になってしまうのではないかということが懸念されます」
ポジティブな側面も
もっともこの点、私立灘中学・高校の前校長で現在、兵庫県私立中学高等学校連合会の理事長を務める和田孫博氏は、
「世間的には学費がすべて無償になるなんて誤解されていますけど、あくまでも今回の支援金は授業料部分に関するものです。また公立とは異なり、私立は行政が校舎などを提供してくれませんので施設費などがかかります。ですから、授業料が無償化されても、それ以外の費用は納めていただく必要があります」
としながら、ポジティブな側面に言及する。
「低・中所得層への高校生等奨学給付金の拡充も、無償化の内容には盛り込まれています。これまで学費の問題から、私立に通いたくても通えなかった生徒が私立にチャレンジできるようになります」
ちなみに、灘は高校受験で入学が可能だ。
後編【「喜ぶのは偏差値の低い私立高校だけ」 高校授業料無償化で何が起きる? 「行ける高校が近隣になくなる子も」】では、高校授業料無償化のさらなる問題点について徹底解説している。
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