「裕福な家庭にも、税金から支援金が」 私立高校無償化の“負の側面”を専門家が解説 「教育の過熱化につながりかねない」

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“2拠点生活”

【全2回(前編/後編)の前編】

 自民党と公明党は日本維新の会の要求をのんで、予算成立と引き換えに高校授業料を無償化することで合意した。だが、専門家は無償化という聞こえのいい言葉に惑わされてはならないと警鐘を鳴らす。かえって、教育格差を招くなど深刻な懸念があるというのだ。

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 石破茂首相(68)が東京・赤坂の議員宿舎から首相公邸に転居したのは、就任から3カ月余りを経た1月12日のことだった。公邸の点検・修繕作業に手間がかかったというのが、入居まで月日を要した表向きの理由である。

 政治部デスクが言う。

「現在も石破氏は宿舎を引き払ってはおらず、“2拠点生活”を送っています。それというのも、石破氏は政局に絡む大事な相談を宿舎で行っているんです。官邸や公邸で人に会えば、総理番に動きが筒抜けになりますからね」

“一度、前原と政権を作ってみたいんだ”

 実際、石破氏は公邸入居後も、計10回以上宿舎に立ち寄っている。そこには、ある目的があった。

 政治ジャーナリストの青山和弘氏が明かす。

「石破氏は宿舎を利用して、日本維新の会の前原誠司共同代表(62)と密かに何回も顔を合わせています。両者は高校授業料の無償化などについて水面下で協議を重ね、大筋で合意に達したのです」

 この点、二人の人間関係に注目するのは、政治アナリストの伊藤惇夫氏だ。

「石破さんと前原さんは、鉄道が共通の趣味で気心が知れています。7~8年前になりますが、石破さんとの雑談中に“一度、前原と政権を作ってみたいんだ”と打ち明けられたこともありました。石破さんにとって、前原さんはくみしやすい相手だったといえます」

 少数与党に転落し、野党を引き入れることなくしては国会運営もままならない石破政権。そこで前原氏が唱える高校無償化をのみ、予算成立へ維新の協力を取り付けたというわけだ。

「今回、自民は維新と国民民主党をてんびんにかけました。国民民主が主張する103万円の壁の見直しには7~8兆円が必要です。その点、維新の高校無償化は約5500億円の財源で済むと考えた。自民は予算と引き換えに、より政策コストのかからないほうを選んだに過ぎません」(同)

「結局、永田町は人」

 維新は当初、公立・私立共通の就学支援金11万8800円については所得制限の撤廃を主張。私立向けの支援額も現行の上限39万6000円から大阪府と同額の63万円に引き上げることを要求した。

「結果、公立・私立共通の支援金に関する所得制限は25年度で撤廃、私立向けの支援金は26年度から上限を45万7000円まで引き上げることで決着しました。これでほとんどの私立高校は、実質無償になります。一時、交渉が難航したのは、前原氏以外に自民との橋渡し役になれる人間が執行部にいなかったため。そこで自民の森山裕幹事長とパイプを持つ、遠藤敬・前国対委員長が途中から両党間の調整に入りました」(先の政治部デスク)

 遠藤氏に聞くと、

「1月末、前原さんから直に“与党との交渉が行き詰まっているので、協力をお願いしたい”という依頼がありました。話をしたのは森山さんや渡海さん(紀三朗・自民党政治改革本部長)です。数字は、自民党側が財務省・文科省と調整して出してきたもの。結局、永田町は人なんです。政策の中身の議論より、どれぐらい相手と付き合っているかが大事だということです」

 かくして自公維の三党は、高校無償化を柱とする予算案の修正合意に至ったのである。

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