「笑おうにも顔がまったく動かせなくなり…」 帯状疱疹の恐怖体験をフリーアナ・早坂まき子が明かす
【前後編の後編/前編からの続き】
最近とみに耳にする機会が増えた「帯状疱疹」の予防策に、ようやく国が本腰を入れ始めた。大人なら誰もが発症するリスクを抱え、その対処が遅れれば重篤な後遺症を患う危険性が高い。まさに「正しく恐れる」ことが肝要な“国民病”への完全対策をお届けする。
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前編【「成人の9割が、帯状疱疹の原因となるウイルスを持っている」 恐ろしい帯状疱疹について専門家が警鐘 「一生苦しむケースも」】では、帯状疱疹の恐ろしさと、早期に病院にかかる重要性、昨年9月に帯状疱疹を発症したフリーアナウンサーの早坂まき子氏(43)による体験談を紹介した。
改めて早坂子氏に聞くと、
「発症から10日ほどたって、ようやく頭痛が治まってきた頃でしたね。司会のお仕事をしていると、口を動かしづらいことに気付いた。やけに左目が乾くなと思ったら、まばたきしているつもりができていない。左目だけ視力が落ちたようで不安を覚えました。左目が常に半開き状態で乾いてしまうので、寝る時は眼帯が欠かせなくなりました。また、水を口に含んでも一気にこぼしてしまうようになり、歯磨きの際も、うがいがうまくできませんでした」
多少の覚悟はしていたとして、早坂氏はこう続ける。
「帯状疱疹になってしまうと、よく口から水やお茶をこぼすなんて話も聞いていました。事前に医師からも、耳に帯状疱疹を患うと、顔面まひや神経痛が出るかもしれないと告げられていたんです。私の場合、最後は笑おうにも顔がまったく動かせなくなりました」
「仮に顔面神経まひが一生残ることになっていたら……」
幸いにして、帯状疱疹の発症から1カ月半ほどたった10月末には、普段と変わらぬ姿にまで回復を果たす。
「今だから笑って話せますが、仮に顔面神経まひが一生残ることになっていたら、相当メンタルをやられますし、仕事もできない。外出もしたくなくなり、人になんか会いたくないと自暴自棄になっていたでしょう。本当に運が良かったとしか言いようがありません。帯状疱疹の経験者は、皆さん“すごく痛くて大変”と言いますし、私自身も“なんでこんな目に”と泣いていたくらいです。自分は40代ですが、仮に高齢者だったらあの痛みに耐えることができていたかと考えてしまう。今より年を重ねていたら、相当にしんどかったと思います」
50歳を過ぎると、発症率も発症者数も一気に上がる
奈良県立医科大学皮膚科学教室教授の浅田秀夫氏は、こう警鐘を鳴らす。
「神経が変性を起こしてPHN(帯状疱疹後神経痛)になってしまうと、治療のための良薬がなかなかないのが現状です。比較的、神経の再生能力が強い若い方なら軽症で済む方もいますが、高齢になるほどPHNが悪化しやすいのです」
そもそも高齢者ほど帯状疱疹にかかりやすいというデータまで存在するのだ。
宮崎県では1997年から、県内の皮膚科医会に属する医療機関や大学病院などで、帯状疱疹と診断された患者の人数と性別・年齢を毎月集計。世界でも類のない大規模な疫学データとして「宮崎スタディ」と呼ばれている。
この調査研究に携わってきた外山皮膚科院長の外山望氏によると、
「25年前と比べて県内の人口は減少しているのに、帯状疱疹の発症者数は上昇しています。毎年、感染者数も同様に右肩上がりになっていて、特に50歳を過ぎると、発症率も発症者数も一気に上がることが、グラフを見ていただければ分かると思います。例えば、97年には1年間で人口1000人あたり3.61人が発症していましたが、22年では6.5人にまで増えています」
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