「青々とした緑」とは“何色”なのか? 「日本語教師」が明かす“国語”ではなく“日本語”を教える難しさ…「暗黙のルールで教室では触れない話題もあります」
近年、「日本語教師」という仕事が注目されつつある。日本人が学校などで習う「国語」ではなく、外国人に「日本語」を教える仕事だ。
日本語は、世界的に見ても外国人による習得が非常に難しい言語だといえる。
ひらがな、カタカナ、漢字という3種の文字がありながら、発音は50しかないため「同音異義語」が多く、「パラパラ」というオノマトペ1つで雨の降り方だけでなくチャーハンの状態をも表現する。
「ン」と「ソ」がかき分けられるまでに3か月を要したかと思えば、次に習う漢字においては、1つ1つなんとか読み方を覚えた苦労を「当て字」がかっさらうのだ。
日本文化の国際的な広がりや外国人労働者の受け入れが進む時流の中、そんな日本語を第一線で教える日本語教師という仕事は、2024年4月に国家資格が創設されるほど重要視されている。
筆者は過去10年ほど、断続的に非常勤の日本語教師として多くの外国人留学生、そして各企業の駐在員に日本語や日本文化を教えてきた。外国人からみる日本語の難しさについては以前も詳しく紹介したが、今回は、教える側である日本語教師の現場から日本語や日本文化を伝える難しさについて紹介したい。
日本語教師になるには
2023年のデータを見ると、日本にある日本語学校は839校。年々増え続けている。
日本語教師という仕事の魅力は、何と言っても多くの国の文化に触れることができることにあるだろう。
筆者の場合、教室で60の国と地域から来た留学生4000人と出会ってきた。その後国へ帰り、日本と自国の橋渡しをしている学生、すっかり日本語を忘れてしまった学生など様々だが、筆者が彼らの国に行くことになると10年以上経ったいまでも「先生に会いたいです」と、自国のガイドを買って出てくれる。
一方、仕事で来日している駐在員のビジネスパーソンの生徒たちとの時間では、彼らの仕事に対する姿勢や両国のビジネスにおける文化の違いなどに日々刺激を受けていた。
しかし、何よりもこの仕事を通して感じられるのは、「日本の魅力」だ。
なぜ自分を指すときに日本人は「鼻」を指すのか、「青々とした緑」は何色なのか。学生からの純粋な質問を通して、今まで気付きもしなかった日本や日本語の奥深さを知る最高の環境だといえる。
そんな日本語教師だが、日本語が話せれば誰でもなれるわけではない。先述した通り、教えるのは「国語」ではなく「日本語」だからだ。
後ほど紹介するが、日本語知識がゼロの外国人に日本語を教えるためには、独特な活用や概念を知っておく必要がある。そのため、ほとんどの日本語学校では、420時間の日本語教師養成講座を受講したか、「日本語教師試験」に合格していることを採用条件として挙げている。
[1/3ページ]