“動く機関車”を自宅に保存…40代のがん診断で目覚めた「趣味の達人」が説く「定年後では遅い」理由
本体100万円、移設に60万円
さて本題。件のディーゼル機関車を買い、自宅に設置したのは2012年2月のことだった。きっかけを作ったのは、鉄道好きの息子だったという。意外にも歩鉄さん本人は鉄道に全く興味がなかった。
「それまで一度も鉄道にハマったことはありませんでした。息子が廃線や廃道のホームページを見るようになり、『今度は実際に歩きたい』と言うから、一緒に行くようになりまして、そのうち私もハマってしまい、時間を見つけては全国の廃線跡などを見に行くようになったんです」
こうして鉄道系も趣味に加わった歩鉄さんに、息子が悪魔の(?)囁きをする。
「『ネットでディーゼル機関車が売ってるよ』って教えてくれたんです。値段が出てなかったので問い合わせたら、『一度見に来て』と言うので富山県の伏木貨物駅まで息子と見に行きました」
そして、躊躇なく買うことを決めた。価格は、
「本体が100万円。10トントラックでの移設に60万円です。除雪車として使われていたので、もともとは前に排雪する装置がついていたんだけど、庭に入らないから外してもらいました。その費用と、線路敷くのも含めて軽自動車と同じぐらいですから、一家に一台とオススメしています(笑) 今ならもう少しかかるかもしれませんね」
奥さんの反応は?
「何も伝えず黙って買って、うちに届く少し前に息子がバラしちゃったんですが、『ふーん』という感じで。もう諦めてるみたいです(笑)」
「旧国鉄色朱色4号」へ塗り替え、踏切も
歩鉄さんは、ディーゼル機関車を家に置くだけでは満足せず、もうひとつの趣味であるマンホール蓋のメーカー2社にヘッドマークの制作を依頼した。それぞれ型台に10万円、本体に10万円、2枚で計40万円をかけ、マンホール蓋の特製ヘッドマークを作ったのだ。ハマっていた2つの趣味がこんな形で結びついた。
2017年には自分の手で機関車の錆を落とし、半年以上をかけて塗り替えた。もとの黄色い車体を、国鉄が気動車やディーゼル機関車で採用していた「旧国鉄色朱色4号」カラーに変えたのである。さらに2018年には、10トンある機関車の設置場所をジャッキを使って自力で変え、線路を付け足して、庭で短い距離を走行できるようにした。その後、業者から部品を購入し、踏切を2台設置する。警報機などの回路は自分で組み、ディーゼル機関車の動きに連動して音が鳴るようにした。
本物を入手するだけでは終わらず、付随するアレコレも自分の手で整えて、実際の環境に近づける。究極の趣味人と言うしかない。
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