“動く機関車”を自宅に保存…40代のがん診断で目覚めた「趣味の達人」が説く「定年後では遅い」理由
埼玉県蕨市。JR西川口駅から少し離れた住宅地を歩いていると、突然本物のディーゼル機関車が現れる。公園などではなく、普通の家の庭に、だ。しかも線路が敷かれ、時々動いているという。趣味が高じた、いや、行きすぎた趣味を持っていると言ってもいいこの家の主は、いったいどういう人物なのか? 話を聞いてみると驚くべき趣味遍歴が明らかに。仕事一筋だったという持ち主はなぜ趣味の人に? そして「好きなことやるなら定年を待たないほうがいい」と断言する理由とは?【華川富士也/ライター】
鉄オタの夢を庭で叶えた会社員
埼玉県の住宅地に突如現れる朱色のディーゼル機関車。道路と家の境界には踏切が2つもある。機関車も踏切も時々動いており、単なる“置物”ではないようなのだ。
鉄道を愛する人たち、つまり“鉄オタ”にとって、実際に線路を走っていた車両を所有するのは“夢”。自分で運転するのも“夢”。しかし前者は設置するための土地の取得や運搬にかかる費用を考えると、ほとんどの人は諦めてしまう。「いつかは…」なんて希望を持っても実現できやしない。それが現実だ。
後者については、全国で「体験運転会」が行われているので、それに参加するという手はある。とはいえ、年に数回の予約競争を勝ち抜き、運転できる数十分のために現地まで行かねばならない。どちらも何かとハードルは高いのだ。
その難易度の高い2つの夢を実現してしまった人が、ここにいる。
この機関車の持ち主は、機械系の会社に勤めている土橋洋一さん(60)。SNS上では「歩鉄の達人」というアカウント名で、廃線跡や廃墟、少し前に趣味として加わった居合切りや刀研ぎなどの写真や動画をアップしている(以下、歩鉄さん)。
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