耐震や駅チカだけじゃない… これから「住宅の価値」を大きく左右する“新たな格差”とは
今年3月までの新築を買った人は損してしまうのか?
「それについて言えば、3月までに建設された新築では、断熱性能4の基準が満たされていないのでは、と心配する必要はありません。ここ数年の間に販売された新築も、9割ぐらいは既に等級4を満たしているからです」(高橋氏)
2024年からは、住宅ローン控除を受ける条件にも「断熱等級4以上」が追加された。それ以前も断熱性能に応じて、受けられる控除額も増える仕組みになっていたため、住宅メーカーは、義務化に先駆けて断熱等級4以上の住宅を積極的に供給してきた。減税を受けられる住宅の方が売りやすいためである。
「ただ、これから住宅の購入予定のある方には、あえて最低基準の等級4を買うメリットは大きくありません。新築であれば断熱等級6以上の購入を強くオススメします。それは住宅の快適性はもちろんのこと、住宅のリセール価格にも影響が出てくる可能性が高いためです」(同)
予定通り、2030年に断熱等級5が義務化された場合、その時点で「断熱等級4」の市場価値は相対的に落ちてしまうことになる。加えて、より高い等級を選ぶコストがそこまで高くないことも、今からなるべく等級の高い住宅を選ぶべき理由だという。
「価格差については、物価の変動によっても変わりますが、大まかに言えば新築住宅で、等級4と等級5のコスト差は1戸あたり10万円ほど。等級4と等級6のコスト差も60万円ほどと言われています。等級7だけは250~300万円ほど上乗せになるので、少し負担が大きくなりますが、いずれにしても住宅価格全体で考えればそれほど大きな金額ではありません」(同)
では、既に断熱等級4の新築住宅を購入してしまった人はどうすれば…
「既存住宅の断熱性能を語る上で、最も重要なのは“窓”です。日本の窓で問題なのは、いまだに多くの住宅でアルミサッシが採用されていること。実は、冬に気温が下がる先進国で断熱性能の極めて低いアルミサッシが重用されているのは日本だけなのです。ただ、この弱点は樹脂製サッシの内窓を追加することで大幅に改善が可能です。『先進的窓リノベ』という補助金制度を使えば、3LDKのマンションなら20万円台での導入が可能な場合も多い。ぜひ検討してみてください」(同)
住宅購入サイトにも断熱等級が記載されるようになる?
今はまだ、住宅選びの際には「断熱性能」をしっかり確認すべし、というリテラシーが浸透していないが、断熱等級4の義務化が始まれば、それも段々と変わってくるだろう、と高橋氏は考えている。
「欧州では、購入/賃貸に限らず、住宅の断熱性能は開示が義務になっています。居住の快適性や、エネルギー消費量に差が出てくるため、経済的価値につながっているのです。今後は、SUUMOなど、日本の住宅購入サイトでも断熱等級の記載が一般的になっていく可能性は高いでしょうね」
つまり、何年か先に家を売ろうとした際に、
“立地やデザインはいい感じなんだけど、断熱等級がショボいんだよね~”
と買い手から敬遠されてしまうことで、販売価格が落ちてしまうことになり兼ねないというのだ。
「今はまだ中古市場に低断熱の住宅がたくさんあるので、気にする人も少ないでしょうが、長い目で考えた時には資産価値の意味でも“断熱”は重要なキーワードになっていくはずです」(高橋氏)
少しずつ建てられているという「高断熱賃貸住宅」では、その快適さに魅入られ、入居者の居住年数が長くなる現象が見られるそうだ。つまり、断熱性能の高い賃貸は「利回り」の側面からも有利になる。
「QOL(クオリティオブライフ)の向上には、素敵なキッチンや、広いお風呂といった目に見える部分だけでなく断熱も大事。これから住宅を購入する人には、ぜひ頭に入れて頂きたいですね」(同)