「双子の赤字」に挑むトランプ政権の強硬手段が「米国経済の急減速」を招く理由 GDP推計値が「急変」、リストラ推進に金融市場は無反応

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関税攻勢に悲鳴を上げた飲食業界

 トランプ米大統領の関税攻勢が止まらない。3月4日にカナダとメキシコに25%の関税を発動し、中国に対する追加関税をさらに10%引き上げ、20%とした。

 米国の貿易赤字の早期解消を目指し、さらなる関税引き上げを計画しているトランプ氏だが、米国経済への悪影響も避けられなくなっている。輸入品の価格上昇などによりインフレが再加速する可能性が高いからだ。

 米カード比較サービスCreditCards.comが2月18日に発表した調査結果 によれば、トランプ関税への不安から米消費者の2割が通常よりも多くの商品を購入(買いだめ)しており、「関税インフレ」の兆候が出ていることが明らかになった。

 飲食業界への影響が特に大きいようだ。全米レストラン協会 は「メキシコとカナダからの食品・飲料製品に25%の関税が課されると値上げせざるを得ない」と訴え、関税により業界全体で120億ドル(約1兆8000億円)の被害が出ると試算している。

実質GDP成長率の推計値が「急変」

 消費者心理も悪化している。米調査企業コンファレンス・ボードが2月25日に発表した米消費者信頼感指数は98.3と昨年6月以来の低水準で、前月からの低下幅は2021年8月以降で最も大きかった。1年先の予想インフレ率は6.0%と前月よりも0.8%高くなり、今後1年以内の景気後退を予測する消費者の割合は9カ月ぶりの高水準となった。

 米商務省が2月28日に発表した個人消費支出統計では、1月の個人消費が前月比0.2%減と予想外のマイナスとなった。

 関税の引き上げは駆け込み輸入を助長し、貿易赤字をさらに拡大させる副作用もある。個人消費の変調と貿易赤字の拡大が好調な米国経済の足かせとなりつつある。

 アトランタ連邦準備銀行が各指標をもとに実質GDP成長率の推計値を自動算出する「GDPナウ」が2月28日に更新され、今年第1四半期の経済成長率予測は年率1.5%の減少となった。前日まで2.3%の底堅い成長率が示されていたが、これが急変した形だ。次の更新は3月末までに発表される月次統計を反映することになっているが、成長率予測が今後改善する見込みは低いと言わざるを得ない。

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