石破首相に退陣要求した「爆弾男」西田昌司議員インタビュー 「失われた30年」を招いた「財政健全化」という“悪しき呪縛”
1月の利上げ決定は愚策
――民間企業の投資意欲を減退させてしまったと。
もう一つ原因がある。1988年にBIS規制が策定され、国際業務に携わる銀行の自己資本比率規制を、それまでの4%以上から8%以上に引き上げた。これで貸し出せる額が半分になった。その数年後に日本でこの規制が本格適用され、これによって、600兆円あった金融機関の融資残高は、「不良債権処理」の名目の下で400兆円台に落ち込んだ。つまり3分の1のお金(約200兆円)が消えた。とんでもないことをしたわけだ。それに懲りて民間企業は投資のために借り入れることがトラウマになった。民間で融資や投資が落ち込んだのなら、政府が国債発行してどんどん景気対策すれば良かったのだが、約200兆円もの金額が一気に消えたため、10兆~20兆円の経済対策では焼け石に水だった。民間企業は負債を減らし、身の丈に合わせた経営をせざるを得なくなった。
同時に、政府では「国債発行して財政を悪化させてはいけない」という間違った暴論が「正論」になり、今日まで続いている。民間も政府も投資しなくなり「デフレ社会」が出来上がった。財政再建論者はこうした現実をまったく見ていない。財政再建自体に意味はなく、必要なのは国民経済の再生だ。
――どうすればいいのか。
これまでの逆をすることだ。政府が長期計画を示して毎年、当初予算で相当のインフラ整備、更新を計上すれば、民間企業は投資額を増やし、経済が上向いてくる。やがてインフレ率が2%を超えて、3~4%に過熱してくれば金利を引き上げて調整すればいい。しかし、民間と政府の投資額が増えていないのに日銀は今年1月、0.25%の利上げを決めた。やるべきこととは正反対の愚策である。インフレ率が3%を超えたと言っているが、それは需要増による「デマンドプルインフレ」ではなく、輸入品の価格上昇などに起因する「コストプッシュインフレ」、つまり悪いインフレだ。
日銀は「市場との対話」と言うが、市場とはつまり銀行のこと。銀行は金利を下げているのに投資額が増えておらず、収益が上がらない。よって利上げを望んでおり、それに応えたのが「市場との対話」の実情だ。今回0.25%引き上げた結果、メガバンク全体で3000億円の増収になると新聞に出ていたが、まさに銀行のためにやっている。もう一つの大きな意味は、金利が上がると、予算の一般会計から出る国債の利払い費が増えることだ。国債残高が1000兆円なら、0.25%利上げすると2.5兆円の増加。これは「国債の利払い費が増えるので、国債残高を増やしてはならない」という財務省の論法を日銀が後押ししていることになる。利上げの背景には、こうした財務省への「気遣い」がある。
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