石破首相に退陣要求した「爆弾男」西田昌司議員インタビュー 「失われた30年」を招いた「財政健全化」という“悪しき呪縛”
財政政策で積極的出動と健全化のいずれを重視するかは、交わらない「神学論争」に映る。経済が「失われた30年」と呼ばれる日本では、昨今の物価高騰と相まって、減税や教育関連の無償化など負担軽減の議論が熱を帯びる。国債発行の意義を前向きにとらえ、積極財政派の論客として改めて注目を浴びるのが税理士でもある西田昌司参院議員(自民党、京都選挙区)だ。3月12日には、自民党の参院議員総会で「今の体制では参院選を戦えない」と石破首相に退陣要求したことでも話題を呼んだ。
会計学の視点を交え、理詰めで閣僚らから答弁を引き出すやり取りは、時に本人が「国会の爆弾男」との異名で呼ばれるなど、国会質疑の見どころの定番と言っていい。丹念に事実を示しながら「常識」に挑む言説は、脈々と続く戦後財政政策の悪しき「呪縛」にも及んだ。
(インタビューは2025年2月5日に実施しました)
【前後編の前編】
【政策ニュース.jp×紀尾井町戦略研究所:聞き手=市ノ瀬雅人/政治ジャーナリスト】
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「国債は子や孫にツケ」は本当か
――日本経済の現状をどのように見ているか。
(西田昌司氏、以下同)まず、停滞の原因をしっかり見極めることが重要だ。政府はこの30年間、必要な財政出動をしなかった。以前は長期的インフラ整備を「総合開発計画」に沿って毎年実行し、公共事業関係費は現在の3倍の年15兆円ほどあった。補正予算を足して総額約20兆円になった年もある。長期計画があれば、地方自治体も民間企業もそれに合わせ、地域でさまざまな投資をする。
ところがその計画がなくなった上、公共事業関係費もこの30年間で一挙に減った。民間投資額は激減し、民間部門は「貯蓄超過」に陥っている。借り入れや投資をするより貯蓄しているわけだ。国民総生産(GDP)は低迷し、税収が減った。税収不足を補うため発行した赤字国債は現在で累積1000兆円を超すが、それは投資ではなく民間部門で貯蓄に回っている。だから経済成長していない。
――国債残高が増えている。
それでどうなったかというと、一つは政府が国債を出し渋るようになった。「国債残高を増やすと財政破綻する」という間違った理論を真実だと思い込み、「孫や子の代まで税金で国債を償還することになり、国家財政が大変なことになる」と言ってきた。しかし30年経って既に孫や子の代なのに財政破綻していない。理由は、国債償還はすべて借り換え債を発行し、それに差し替えているだけだからだ。政府が国債を発行して財政出動し、結果的に民間の貯蓄を増やし、その償還は借り換え債で行っている。こうした流れなので破綻のしようがない。
問題は、政府が長期計画による財政出動をしなくなり、民間が積極的に投資する気力と機会を失くした点にある。破綻したのは財政でなく国民経済だ。新たな投資がないため地方で人が暮らせなくなり、人口減少の要因ともなった。
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