【自民党裏金事件】朝日新聞に「キックバック復活を求めた」と名指しされた「下村博文氏」…直撃取材に“大反論”の中身

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「6月下旬」か「7月下旬」か

 記者が「7月下旬に下村さんが松本さんに『還付を求めている議員がいる』と伝えたことは間違いないですね?」と確認を求めると、下村氏は「6月下旬にすでに伝えていました」と「伝えた」事実は認めたのだが、時期は違うと言う。

「なぜ時期が食い違うのでしょう?」と記者が問うと、下村氏は「7月下旬に『その後、どうなった?』と還付再開ではなく、処理について質問した」ことが影響した可能性を示唆した。もし、この説明が事実だとすれば、松本氏が勘違いしていることになる。

 下村氏が「6月下旬」を主張するのには理由がある。安倍氏の銃撃事件が7月8日に発生したからだ。下村氏は記者に「安倍さんが会長のうちに私が『還付を再開しろ』と言うはずがないし、そんな権限はありません」と説明する。

 安倍氏が殺害される前に、安倍氏と松本氏に対して「キックバックを求めている議員が一人いる」ことを伝えただけであり、銃撃事件が起きた後の7月下旬に「キックバックを再開しろ」と要求したことは絶対にない──これが下村氏の反論の骨子ということになるだろう。

 さらに下村氏は記者に「朝日新聞の記事は、東京地検の任意の事情聴取に対して松本氏が『証言した』としか書いていません」と指摘する。

下村証言の信憑性

「実際の捜査は松本氏の証言通りの結果にはなっていないわけです。私が松本氏に指示したのなら、私も共犯になります。もしかしたら主犯かもしれない。ところが、私も他の政治家も不起訴でした。政治家に忖度したのではなく、東京地検は100人の検事を全国から集め、徹底的に調査した結果の話です。松本氏が供述したのは事実かもしれないけど、私が共犯になっていないのは、私が松本氏に指示し、松本氏がその通りにしたわけではないという証拠でもあります」(同・下村氏)

 確かに下村氏は2024年1月に不起訴が発表され、松本氏は同年10月に東京地検が下した禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が確定した。

「東京地検の捜査で潔白が証明された」という下村氏の主張は説得力があると判断する向きもあるだろう。ただし、下村氏が記者に述べた「8月の幹部会議は『還付を再開しない』が前提でした」との説明とは矛盾する証言もある。

 松本氏は「幹部会議で塩谷氏が『(還流は)やむなし』と発言した」と証言しているのだ。週刊新潮の記者は塩谷氏にも電話取材を申し込んで確認を求めると「僕はそれを政倫審で言っています」と松本証言が正しいとの見解を示した。

残る謎

 下村氏の取材に話を戻せば、記者が「証言の食い違いは2年以上前の話だからですか?」と尋ねると、下村氏は「いや、そうじゃなくて」と否定する。

「それぞれの事実認識が違うということでしょうね。記憶違いじゃなくて、これは政倫審ではっきり答えているし、検察にもそういう話を言ったからこそ、検察は松本氏の供述が100%正しくないという判断をしたのだと思いますよ」(同・下村氏)

 記者が最後に「下村さんに『還流してほしい』と言った議員は一人だけですね」と質問すると、下村氏は「そうです」と頷く。記者は「その方は誰なんですか」と畳みかけたが、「ちょっと、その人のプライバシーの問題があるので言えないです」との回答だった。

 電話取材を行った記者は「とにかく『自分の主張を聞いてほしい』という下村さんの強い意思だけは伝わってきました」と振り返る。

 自民党と立憲民主党は2月28日、参議院で予算審議が終わると、「政治とカネ」の集中審議を開くことで合意した。さらに立民など野党5党の国会対策委員長は集中審議に安倍派幹部4人の出席を求める方針も確認した。その4人の中に下村氏が含まれているのは言うまでもない。

註:見出しは電子版

デイリー新潮編集部

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