【自民党裏金事件】朝日新聞に「キックバック復活を求めた」と名指しされた「下村博文氏」…直撃取材に“大反論”の中身

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 販売ノルマを超過したパーティー券の売上は、売った議員側に“裏金”としてキックバックする──旧安倍派の政治資金パーティーを巡る事件で、キックバックを復活させたのは誰だったのか。今、この問題に対する関心が改めて高まっている。下村博文・前衆議院議員の名前を朝日新聞が報じたことも大きいのだが、まずは経緯を振り返ってみよう。

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 担当記者は「安倍派では毎年5月に政治資金パーティーを開催。所属議員にはパーティー券の販売が命じられ、ノルマが課されていました」と言う。

「その際、ノルマ超過分を還流し、キックバック分は裏金として政治資金収支報告書に記載しないことも慣習化していたのです。それを2022年3月ごろ、会長だった安倍晋三さんが還流は止めるべきとの意向を表明。結果、翌4月に安倍派は“キックバック・スキーム”を中止し、5月の資金パーティーでは裏金処理は行われませんでした。ただ、7月の銃撃事件で安倍さんは凶弾に倒れると、翌8月に安倍派の幹部5人が会議を開き、まもなくキックバックが復活した──というところまでは明らかになっています。しかしキックバックを復活させた中心的人物は誰だったのか、今も謎として残っているのです」

 2022年8月の安倍派幹部会議に出席した顔ぶれは明らかになっている。西村康稔・元経産相、現在は無所属の世耕弘成・衆議院議員、昨年9月に政界引退を表明した塩谷立・前衆議院議員、当時は安倍派の会計責任者だった松本淳一郎氏、そして昨年10月の衆議院選挙で落選した下村氏の5人だった。

 衆議院予算委員会は2月27日、会計責任者だった松本氏の参考人招致を実施した。国会ではなく都内にあるホテルの一室が会場に選ばれ、なおかつ報道陣には非公開という異例の措置が話題になったが、予算委は議事録を作成して公開した。

衝撃の松本証言

「議事録によると、一部の安倍派議員が『ノルマ超過分は前のようにキックバックしてほしい』と要求していたことから、2022年8月の幹部会議で『復活はやむを得ない』という結論に達したと松本氏は証言しました。ただし西村、世耕、下村の3氏は衆参両院の政治倫理審査会などで『8月の幹部会議では決まらなかった』と食い違う説明をしています。さらに松本氏は7月の段階でキックバック復活を求めた幹部がいたとも明かしました。『幹部とは誰か?』の質問に松本氏は『名前の言及は差し控える』と拒否したものの、『現職か?』の質問には『現職ではない』と答えました」(同・記者)

 幹部会議に出席した5人のうち「現職ではない国会議員」となると、塩谷氏と下村氏の2人に絞られる。新聞各紙が2月28日の朝刊で松本証言を詳報する中、朝日新聞は1面トップと電子版に「還流再開求めたのは『下村氏』 安倍派元会計責任者、東京地検に供述」との記事を掲載した(註)。

 記事によると、松本氏は2023年から24年に受けた東京地検特捜部の任意聴取に対し、キックバックの再開を求めた幹部として下村氏の名前を証言。さらに「一部の議員がキックバックの中止に反対している」ことも下村氏から伝えられたという。

下村氏の反論

 週刊新潮は2月28日、下村氏に電話で取材を依頼した。下村氏は「まもなくXやFacebookに反論を掲載するので、ご覧になって改めて電話してもらったほうがいい」と提案。記者が反論を確認して取材はスタートした。

「2022年4月に安倍会長から『現金による還付(キックバック)は止めよう』という話がありました。それを徹底するということで幹部4人が手分けして所属議員に電話をしたのです。その後、5月17日にパーティーが開かれましたが、パーティー券は2月から配っていたこともあって、6月下旬に一人の議員から『チケットをノルマ以上に売っているので、還付を受けられないか』という話がありました」(下村氏)

 下村氏は松本氏に「一人の議員から還付してもらいたいという話があった」と報告。さらに銃撃事件の前だったので、安倍氏にも伝えたという。

「松本氏は『7月下旬に下村から還付再開を要請された』、『8月の幹部会議は還付再開が前提の議論があり、誰からも異論は出なかった』と証言したそうです。しかし、8月の幹部会議は『還付を再開しない』が前提でした。議事録を見てもらえば分かりますが、『所属議員が資金パーティーを開く際、派閥が合法的な範囲である150万円までパーティー券を買う』との議論を行っています。8月の幹部会議では還付を前提とした議論を行っていないと客観的に言えるはずです」(同・下村氏)

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