“古民家カフェ”をオープンして憧れの“スローライフ”…“移住”を夢見る人々に経験者が語る「東京の人が地方に住み続けられない」最大の理由
40道府県は転出超過
ネットでは「未開の地グンマー」と言われるなど、何かとからかいの対象となってきた群馬県が一矢報いた! 移住支援の認定NPO法人ふるさと回帰支援センターによる2024年の移住希望地ランキングで、群馬が初の1位となったのである。理由は首都圏へのアクセスの良さ、そして災害が少ないこと、さらに酷暑が続く夏に嬬恋など涼しい場所を求める人の存在があるという。
【写真】東京から佐賀県唐津市に移住した筆者が野生のイノシシをレーにするまで
さて、筆者も移住者(東京→佐賀)であることから移住の現状についてはある程度理解している。そこで、群馬が1位になったことと、「移住」という言葉、そしてその行為について斜め上からの視点で考えてみる。
「移住希望者に人気」といっても、実際に移住するかどうかは別問題。まずは移住希望先に関連するデータは見ておいた方がいい。総務省統計局の発表によると2024年の転入超過数が日本で最も多かったのは東京都の7万9285人(前年比1万1000人増)で、2位が大阪府の1万6848人(前年比6056人増)だ。
転入超過になったのは東京、神奈川、埼玉、大阪、千葉、福岡、山梨のみで、40道府県は転出超過である。東京の隣の山梨はさておき、基本的に「仕事がある都会」が転入超過の自治体なのである。「移住」といえば、「自然豊かな場所を舞台にスローライフでのびのびと子供を育てられ、私が作った古民家カフェで地元の人と触れ合い。素晴らしい人生の楽園!」的文脈で語られがちだが、そんなものはごく一部である。この点については、移住経験者である私が負の面も含めて後述する。
これが現実
さて、群馬である。2024年4月1日発表では、転入が1万1660人で、転出が1万3339人となり、1679人の転出超過だ。外国人の転入は3281人で、転出が1914人なので1367人の転入超過。多くの技能実習生が群馬県に住み、さらには、日系ブラジル人が多い大泉町があるゆえの結果とみられる。日本人だけで見ると8379人の転入、1万1425人の転出で、結果は3046人の転出超過。
いくら「移住希望地ランキング」で1位になったとはいえ、これが現実なのだ。コロナ以降、「移住は若者がリモートでも仕事ができるようになったから。自然豊かな場所でのびのびと子育てをしつつ、同じだけの金額を稼げる」的文脈で語られることが多い移住が、なんだかんだいって人々は「仕事がある都会」に縛られているのだ。
各地方自治体は「移住希望ランキング上位」「都道府県魅力度ランキング上位」を誇るようになっているが、実生活を考えると結局は首都圏・名古屋圏・関西圏に負けるのである。少なくともよっぽど資産を持つ人(高齢者中心)を除いて。
東京と関西圏の人口が増えている理由としては、仕事があるのに加え、大学や専門学校が多いことも挙げられる。いくら地方の県が魅力をアピールしようとも、「仕事と進学」で圧倒的優位を誇る都会に勝てるわけがない。転入者で東京が一人勝ちの状況であり続けることを見ると、「東京から離れることは難しい」というのが結論である。
[1/2ページ]