浮上する「創業家に欠けていた2つのもの」 関係者の間でささやかれるMBO失敗の“本質的な原因”とは

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 ついに社長交代劇にまで発展した、セブン&アイHDを巡る買収合戦。カナダ・コンビニ大手からの「7兆円買収」案に対抗した、創業家によるMBO(自社株買収)が頓挫した裏に何があったのか。知られざる失策と誤算、そして王者セブン-イレブンの行く末は。

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社長退任はセブン側の“先手”

 セブン&アイHD(以下、セブン)の井阪隆一社長(67)が近く退任する見通しと報じられた今月3日、そのわずか4日前に12%超も下落したセブン株は一時急伸。しかし今後の展開は予断を許さないという。

 全国紙経済部デスクが解説する。

「セブンの社長交代劇の背景には、カナダのコンビニ大手『アリマンタシォン・クシュタール』による買収提案への対抗策として浮上したMBO計画の頓挫がありました。2月27日にセブンが“MBOによる非上場化の断念”を発表すると、セブンの先行きを不安視する声が投資家などの間で一気に広まった。今回の人事は5月に控える株主総会を前に、セブン側が先手を打つ形で不安払拭のカードを切ったとみられています」

「最大のパートナー」が離脱

 結果的にセブンを追い詰める形になったMBOを提案したのは、創業家出身で副社長の伊藤順朗氏(66)と、創業家の資産管理会社である伊藤興業だ。

「同社代表取締役の山本尚子氏(69)は、イトーヨーカ堂やセブン-イレブン・ジャパンを創業した故・伊藤雅俊氏の長女で、順朗氏は次男に当たります。この二人がMBO計画を主導してきましたが、資金調達のめどが立たないことが2月に入って露呈しました」(前出のデスク)

 クシュタールが提案した買収額は7兆円だが、創業家はそれを上回る最大9兆円のスキームを提示。実現すれば過去最大の企業買収案件となったが、額が額だけに資金の調達先も多岐にわたることに。

 国内3メガバンクや米投資ファンドなどに協力を求めたほか、1兆円規模の出資を検討していた伊藤忠商事を「最大のパートナー」と位置付けたが、同社は「(創業家提案の)スキームに多少の無理があった」などとして参画を断念。セブンは計画の仕切り直しを迫られた。

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