「“この子と結婚するかも”と思った」「付き合うとは思ってなかった」 相反する気持ちを抱いた初対面から1年、“15歳差”の二人が夫婦になった理由

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思いを深めた同居生活

 彼女が「次はバーベキューで」と言うと、彼が「今度は飲みたいね」と応じて約束は成立。そこで充さんは自宅に彼女を招いてウッドデッキでバーベキューに興じ、その後も間をおかず、毎週のように会った。

 捺規さんの当時の自宅から充さん宅まで車で約1時間半かかったが、「道内なら近いといえる距離です」と捺規さんはあっさり。

 ただ、時間がもったいない上、交通事故の心配もなくはない。自然と二人の間で同居したいと考えるようになった。結果、その年の9月から同居を始める。

 もともと街中で育った捺規さんだが、芦別市の中でもとりわけ自然あふれる地に建つ充さん宅での生活もへっちゃら。「虫が出ても動揺しないし、細かいことを気にしない」(充さん)と、その姿はたくましかった。

 かたや捺規さんは、充さんが議員という仕事ゆえ外では喋っていることが多いのに、家では静かに過ごす時間が長いことにびっくり。だが新たな一面に「その沈黙も苦じゃない」と気付き、さらに彼への思いを深めることにつながったとか。

告白もプロポーズもなく……

 交際開始から同居まで4カ月足らず。同居開始から1年とたたずに二人は入籍を決める。当初は捺規さんの誕生日の8月13日が候補日に挙がったが、より縁起のいい吉日だった8月11日を選んだ。「『山の日』でお休みの日だから毎年お祝いできるし、自分が山の中に住んでいるので、ゆかりもあると考えた」とは充さん。

 入籍日に結婚指輪を買いに行き、JR札幌駅直結の高層レストランで記念の食事。実は交際開始の打診もなく、入籍日を決めた際にもプロポーズらしきものはなく……。捺規さんは淡々と進むものだと納得していたが、この食事の席で充さんが突然手紙を取り出した。

「プロポーズしていなかったので、ちゃんと手紙を読みます」

 捺規さんは「その姿を見た瞬間に涙が流れてきてしまって」。充さんも、彼女の涙を見て泣き始めた。水をサーブしにきた店員が思わずいったん引いたほど、二人の大粒の涙がとめどなく頬を伝った。

 現在の自宅は、奇跡的にも充さんの生年月日に登記された“同い年”の家だ。目下、彼が捕ってきたシカ肉や山菜を食べるなどして「ここでしかできない」スローライフを楽しむ二人。だが、地元の期待と要請にはスピードと情熱で応えていく意気込みである。

週刊新潮 2025年3月6日号掲載

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