「子どもに性被害について明かさざるを得なかった」 大阪地検トップから性暴力を受けた被害女性が明かす悲痛な胸の内 「私たち家族は地獄のような毎日」

国内 社会

  • ブックマーク

被害感情を逆なで

 こうしたAさんや家族の苦しみを横目に、北川被告は検察庁を2019年に退職。「口外しないなら喜んで死ぬ」とまで言っておきながら、自らはホテルで盛大な退官記念パーティーを開き、多額の退職金を手にし、以後は弁護士として活動。検察幹部や後輩の検察官と飲み歩き、まるで関西検察のドン然と振る舞っていたという。

「被害感情を逆なでされ続けました。私は少なくとも、北川は私が所属する検察組織にはもう関わろうとしないはずだと信じていましたから……。精神的にどんどん追い込まれ、心の病が悪化しました。ついに夫から“このままだと死んでしまうかもしれないから病院に行ってくれ”と言われました。受診したところPTSDで仕事は無理だと診断されました。北川が処罰されないままでは、検事の仕事ができなくなる……。そこで検事としての尊厳と家族との平穏な生活を取り戻すために、被害申告をすることを決めました。夫に伝えると、“応援する”と言ってくれました」

 かくしてAさんは昨年2月、検察組織に被害を打ち明け、刑事告訴に踏み切ったのである。それに当たり、北川被告には先の損害賠償金を全額返金している。しかし、その後、【前編】で述べたような副検事の言動を知った。

「しかも、それを検察組織は放置していました。私の体調は悪化し、再び病欠に追い込まれた。本来助けてくれるはずの検察組織にも裏切られて孤独で、誰も助けてくれないことが怖くて……。家でもずっと塞ぎ込んで泣き続けていました。夫が私の悩みを聞き続けてくれました。夫も、どうしたら私を救えるかと苦しみ続けています。夫には本当に感謝していますが、夫もまた事件の被害者なのです」

「子どもに被害を打ち上げざるを得なかった」

 夫に打ち明けるのさえ辛い経験だったはずだが、Aさんは子どもにも性被害を打ち明けている。いや打ち明けざるを得なかったというのが正確なところだ。

「救いを求め、組織の問題を内部告発するために、昨年10月、会見を行わざるを得ませんでした。この件がたくさん報じられたのはよかったですが、個人情報を秘匿していたのに自宅に取材に来る記者さんがいた。子どもと接触してしまう可能性もあり、子どもに被害を打ち明けざるを得ませんでした。子どもには詳しい話はしていませんが、検察庁内で、上司の人から性的な被害を受けた、と。『性的な』と言えば何があったのか分かる年齢ではあります。“ずっと前に被害を受けたけど最近まで言えなかった。今、裁判になってる。その後も検察庁の中でいろんな被害を受けている”“だから仕事に行こうとしたけど行けなくなってしまった”と。子どもは“すぐに訴えたらよかったのに”とすごく怒ってくれました。その後は、子どもなりに、私が大変な状況だから、この件について触れないようにしてくれていて、報道も見ないようにしています。母親に甘えたいのに我慢して気遣ってくれています」

次ページ:子どもからの手紙

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。