【60歳男性の回想】バブル崩壊の勢いでプロポーズしたけど… 真実を知って「萎えた」モデル彼女の正体

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支えてほしくてプロポーズ

 当時、彼にはつきあって半年になる、乃理子さんという恋人がいた。飲み会で知り合い、半年かけて口説き、ようやくつきあえることになった女性だった。彼女はこぎれいなマンションに住み、モデルをしていると話していた。だが、どういう仕事をしているのか実態がつかめなかったので、彼は「おそらく田舎の富裕層の娘で、親の金で遊んで暮らしているのだろう」と考えていた。性格は明るくおっとりしていて、料理がうまかった。

「知り合ったのは飲み会でしたが、友人に頼まれて頭数のために行ったそうです。本来はあまり外で遊んだりするタイプではないと言っていました。実際、僕が行くというと料理を作って待っているような女性だった。その料理が本当においしくて。バブルが弾けて環境も変わって、会社もこれから大変になりそうだということになり、彼女に支えてもらいたくてプロポーズしたんです。彼女も喜んで受けてくれた」

 ところがある日、彼女は「このマンションを出なくてはいけなくなった」と言った。どういうことなのかと尋ねても彼女は泣いてばかりで言葉が出ない。うちと同じように親が借金をしていたのかと思ったのだが、なんと彼女は、とある会社役員の愛人だったと打ち明けた。相手が来る日が決まっていたので、好弘さんにはわからなかったのだ。その役員はお金がらみで逮捕され、彼女も警察から聴取を受けたという。

「驚きましたね。彼女は苦笑いしながら、『そういうことだから。ごめんね』と言って、その後、急に顔を歪めて泣き出しました。あんな悲壮な涙を見たら、見捨てるわけにもいかなかった」

「何なのあの子」という母

 結局、彼女は逮捕はされなかったが、もちろんマンションは追い出された。行くところがないというので、彼は母親と暮らす古びた賃貸マンションでよければうちに来てもいいけどと言ってしまった。

「母がいるから断るかと思ったら、なんと彼女、それでもいいと転がり込んできたんです。驚いたのは母親です。2DKでしたからね。彼女は夜になると求めてくるし、僕も若いからその気になっちゃうし。しかも昼間、僕は仕事に行ってしまうけど、彼女は母と一緒にいるわけですよ。母は『何なのあの子、家事もしないでテレビばかり見て』って。実は彼女、料理もできなかった。僕が行くときはデパ地下などに行って惣菜を買ってきて、それをあたかも料理したように見せていただけ。母は呆れて、妹と連絡をとりあい、一緒に住むからと越していきました」

 好弘さんはそのまま乃理子さんと同棲を続けた。結婚しようと言ったものの、乃理子さんへの気持ちは少し薄れてしまっていた。

「ただ、彼女はとにかく性には積極的だったので、僕は離れられなくなっていたんです。料理なんかよりそっちのほうがずっとうれしかった。母がいなくなってふたりきりになったら、彼女はアルバイトを始めました。家事も料理もほとんどしなかったけど、それは僕がやるからと言って。休みの日にはふたりでずっとベッドにこもっていることもありました」

 仕事はがんばっていたが、私生活は「爛れていましたね」と好弘さんは笑う。性に没頭していた日々は楽しかったに違いない。ところがその後、彼の運命が激変する。

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 好弘さんが「うつ」になるほど後悔している過去とは…【記事後編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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