トランプ大統領の右腕「イーロン・マスク氏」は“インドネシア”への巨額投資を実現できるか…米中対立のなか「世界一のビジネスマン」の決断は
BRICS加盟で米中対立に巻き込まれるリスクも
テスラ・スペースXを擁するマスク氏と、豊富な資源・人口を抱えるインドネシアは、お互いにとって「理想的なパートナー」と言えそうだ。
ただし、インドネシアが今年初めにBRICSに正式加盟したことが、米国の警戒感を強めている。南アジアの海洋シーレーンを重視する米国にとって、インドネシアが中国寄りの立場を強める動きを見せたことは地政学的に見過ごせない問題となる。
実際、インドネシアでは中国のEVメーカーの販売が急速に拡大しており、来年からは世界最大手のBYDも現地生産を始める。米国が「BRICS加盟国への技術流出」を懸念し、テスラのEV事業とあわせて規制や政治的圧力をかける可能性があるという見方が浮上している。
「今の米国では、対中強硬姿勢はトランプ政権というより議会を巻き込んだ『米国の総意』であるため、インドネシアが中国寄りと見なされれば大規模投資に物言いが入る」(外務省関係者)
特にスターリンクは民間のインターネットサービスにとどまらず、軍事通信にも応用可能な先端技術で、流出すれば軍事バランスを変えるきっかけとなる可能性がある。
政治的リスクと巨額投資
また、スターリンクは個人向けの初期費用が約600万ルピア(約6万円)とインドネシアの離島住民にとっては割高な点が、導入のハードルとなっている。小規模ディーゼル発電に頼る地域でアンテナや受信機を安定稼働させられるかといった課題も残る。
「トランプ大統領は取引(ディール)が得意な政治家だ。中国の技術導入を制限する代わりにスターリンク拡大を支援する、といった条件をインドネシアに提示するシナリオもあり得る」(日系通信大手幹部)
マスク氏は政府効率化省(DOGE)のトップを任されるなど、トランプ大統領の重要な政策ブレーンとして期待されている。米中対立が激化する局面であえて巨額投資を進めることは政治的リスクを伴う。それでも、テスラやスペースXの最高経営責任者としては、インドネシアへの進出が魅力的な事業チャンスであることは間違いない。世界一のビジネスマンであるマスク氏は、どのような決断を下すのだろうか。
[2/2ページ]