「実家片づけ」で子どもが親に言ってはいけない”3大禁句”とは? 散らかった家に住む親に片づけを納得させる方法
親子対立を防ぐ“枕詞”
その上で、実家片づけにあたって親と意見が対立しそうな場合には、「お母さんの気持ちは分かるよ」「お父さんの思いも大切だよね」という枕詞を付けることが、親子対立を防ぐのに役立ちます。
さて、ここで問題です。私がアドバイスを行ってきた人様の家の片づけと、50代の私が4年前、実際に体験した自分の実家片づけと、どちらのほうが大変だったでしょうか? 答えは後者です。実の親子の場合、第三者への配慮という“気配り”をする必要がなく、その分、むき出しの感情がぶつかり合い、けんかになってしまったからです。
私の実家片づけのケースでは、パーキンソン病を患い入院していた母を実家で介護することになり、どうしても介護スペースを確保する必要が生じました。そのためには実家のリビングにあったソファを処分しなければならないのに、父は「捨てない」の一点張り。
「あのね、私はNHKの『あさイチ』にも出てる片づけアドバイザーなのよ」
と言っても、悲しいかな、実の親には通じませんでした……。
結局その時は、父の反対を押し切ってソファを捨てるという「強行突破」の策に出ました。母が実家に戻ってくる日が迫っていて、待ったなしの状況に追い込まれていたためのやむを得ない措置でした。その時の私を支えたのは、「実家片づけができたら、絶対にお父さんにも喜んでもらえるはず」という強い信念でした。事実、介護スペースを確保できたことで、父は母のそばに最期まで寄り添うことができ、はたから見ていてもそれはとても幸せな時間だったと思います。
元気なうちに自ら取捨選択してもらう
時には強行突破も必要な実家片づけですが、できることならば、そうなる前に、余裕をもって進められるに越したことがないのは間違いありません。そこで、いつ実家片づけに着手するかについてですが、親がやりたいと思った時がベストで、具体的にはどちらかの親が亡くなったり、わが家のように介護が必要になったりという機会がきっかけになるかもしれません。
とはいえ、やはり親が元気なうちに早めにできるほうがいい。その目安として、冒頭で触れたように、遅くとも親が後期高齢者になったら実家片づけを意識することを心がけるのも一つの手ではないかと思うのです。
なにしろ、両親ともに亡くなってしまった後の実家片づけの苦労は想像以上のものがあります。その大変さは、「実家じまい」として最近世間でも注目を集めていますが、実家片づけをしておけば、実家じまいのしんどさは経験しなくて済むといえるかもしれません。
実家じまいでは、全てのモノを子どもが自分の判断で捨てなければならなくなります。親の思い出が詰まっているものを捨てるのはとても辛い作業です。親が元気なうちに親自らに取捨選択してもらったほうがどれだけ精神的に楽なことか。
また法律上、死後10カ月以内に相続手続きをしなければなりません。ただでさえ親の死という悲しみに暮れる中、どこにあるか分からない金目の紙を探し出し、さまざまな手続きを済ませるのは本当に大変です。もし、実家が賃貸住宅の場合は、より事態は切迫します。実家片づけを終えないと、いつまでも家賃がかかり続けるからです。
従って、実家片づけの先延ばしは、いずれ費やさなければならないお金と時間と労力という負債、つまり「巨大な時限爆弾」を子どもが抱え続けることを意味し、とにかく親がまだしっかりしている間に取り組むことが重要なのです。
どこから片づけ始めるべき?
そして、実家片づけを済ませることは、負債を抱えることがなくなる子どものためであると同時に、繰り返しになりますが、残りの人生を快適に過ごせるという意味で親のためにもなる。そう、実家片づけは子どもにとっても親にとってもデメリットがなく、メリットしかない作業なのです。
なるほど、実家片づけをする腹は固まった。いざ、片づけを開始しよう。そう思ってくださった方に向けて、どこから片づけ始めるのがよいのかを説明したいと思います。リビングか、キッチンか、それとも寝室か――。
正解は、最も効果的に実家片づけの「成果」を味わえる場所です。片づいたことによって、確実に1日で3度も、親が過ごしやすさを実感できるスペース。それはキッチンです。
(続きは次回にて)
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