「月15万円稼いでいればよい方」「高齢者は引きこもって生活」 日本で暮らすウクライナ避難民のリアル 「支援への熱は冷めきっている」
「音や視界が遮断されても怖がらない人は兵士だと見なされ殺される」
4月中旬、ようやく家族で町を脱出。ロシア軍の手に落ちていなかった州都ザポリージャを目指したが、そこにたどり着くまでにも死とは隣り合わせだった。
「州都までの80キロを移動する途中、16カ所ものロシア軍の検問所を通過しなければなりませんでした。その都度、個人情報やパスポートをチェックされ、男性の場合は衣服を脱がされ身体検査されていました。このとき、頭に袋を被せられ、銃で撃たれている人を目撃しました。これは兵士かどうか見極めるためのロシアの独特な考え方で、音や視界が遮断されても怖がらない人は兵士だと見なされ殺されるのです」
検問所には、マリウポリから逃れてきた大勢の人々も殺到して、500台ほどの車があふれていたそうだが、
「マリウポリはずっと爆撃にさらされてきたので、多くの車は窓やドアが壊れていました。彼らは爆撃に慣れ、感覚が麻痺していた人も多かったので、頭に袋を被せられても怖がらず、それでどんどん殺されたと聞きました。さらには、ロシア軍は避難民の車を奪い、家族が抗議すると皆殺しにすることもありました」
なんとかザポリージャにたどり着き、3カ月後にヴィクトリアさんは、日本語学校の先生からの連絡で、日本が避難民を受け入れていることを知り、家族と離れる決意をしたという。それからポーランドに渡ってビザを取得し、念願の来日を果たした。22年7月のことだった。
そこから先、果たして日本は彼女にとって温かい国だっただろうか。
「事実上、新規の避難民受け入れを止めてしまっている」
侵攻当初、欧州はじめ世界の各国が避難民の受け入れに好意的だった。それから3年がたち、日本の状況はどうなっているか。
「日本政府は、日本に家族がいるなど特別な事情がある人を除いて、事実上、新規の避難民受け入れを止めてしまっています」
と、NGOウクライナフレンドシップサポーターズの加藤秀一理事は語るのだ。
加藤理事は、ボランティアで物資を現地に運ぶなどの支援活動に従事する傍ら、現在19人のウクライナ人の身元引受人になっている。
まず、避難民がおかれている現状の全体像から説明しておこう。
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