高校野球「7回制導入」は“結論ありき”? 指導者が「高野連は、現場の声を吸い上げてくれない」と強い不満が出る一方、「理解」を示す声もある理由

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十分に現場の声を吸い上げられているか

 ただ、そういった致し方ない点はあるにしても、議論の進め方や大義名分の部分で疑問が残ることは確かだ。関東地区の高校野球指導者は、強い不満を口にする。

「高野連がいろんな意見を聞いて進めているようですが、正直、現場の意見を吸い上げるようなことはありません。専門家の意見は、もちろん大事です。ですけど、実際にプレーする選手や指導者の意見も重要ではないでしょうか。7イニング制にする理由についても、選手の健康対策なのか、国際大会に合わせてなのか、運営の問題なのかがよく分からないです。課題を解決するための方法として7イニング制が出てきたのではなく、“7イニングにする”という結論ありきで進めているように感じますね。もちろん決まったら現場としては従うしかありませんが、もっと他に検討すべきことがあるように思います」

「高校野球は教育の一環」

 よく使われるフレーズではあるが、何か重要な決定を行うプロセスを学ぶ意味でも、7イニング制の導入は大きな意味を持っているはずだ。何らかの結論が出るとされる今年12月まで時間は残されているが、冒頭で触れた、国民スポーツ大会の7イニング制導入には唐突なイメージを持った高校野球の関係者が多く、プロセスの十分な周知と情報発信があったようには感じられない。

 高校野球は100年以上の歴史と伝統があり、影響力も大きいだけに、これから十分に現場の声を吸い上げながら、“結論ありきではない議論”が必要ではないだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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