姫路城の入場料「市民以外1000円→2500円」でもまだ安すぎる もっと取るべき納得の理由

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入場者が減るまで値上げを続けるべき理由

 このように、あちらを立てればこちらが立たずで、解決は困難なのだが、そのなかで有効なのは、一定数の人が躊躇する程度に入場料を高くすることだろう。

 今回も、2,500円に値上げすることで、訪れる人が減るのではないかと懸念する声が上がっている。だが、この城を人類の遺産として将来にわたって維持していくためには、訪れる人が減らなければならない。少なくとも、増え続ける現状に歯止めをかける必要がある。

 しかし、保存修理費を確保するために、いま以上の入場料収入は必要なのだから、2,500円どころか3,000円、4,000円という料金を徴収し、一定数の人に入場を躊躇させる。長期的な視点に立つならば、それが一番の解決策だと思われる。

 ところで、外国人向けに高い料金を設定する方法も、あながち否定すべきではなかったのではないだろうか。現在、円安によって円の価値が相対的に低くなっている以上、そのメリットを享受している外国人がより多く支払うことには合理性がある。円高になったらどうするのか、という意見もあったが、そのときはまた料金設定を変更すればいい。また、保存修理のために国費、すなわち税金が投じられているという点でも、日本に税金を納めていない外国人から多く徴収することには合理性がある。

 だが、外国人が支払うか、日本人が支払うか、というのは大きな問題ではない。大事なのは、圧倒的に多くの建造物が残り、なかでもデリケートな高層建築である天守をかかえる姫路城を、どうやって将来に伝えていくか、ということである。まずは市民以外が2,500円でいい。ただ、それで入場者が減らなかったら、減るまで値上げする。問われているのはその覚悟である。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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