姫路城の入場料「市民以外1000円→2500円」でもまだ安すぎる もっと取るべき納得の理由

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放置した途端に倒壊の危機を迎える

 では、なぜ姫路城にはそれほどの保存修理費がかかるのだろうか。それは単純な話である。1993年12月、「法隆寺地域の仏教建造物」とともに日本初の世界文化遺産に登録された姫路城には、明治以降に破壊され尽くした日本の城郭としては、異例の数の建造物が現存している。国宝に指定されているのが大天守以下8棟で、ほかに櫓、門、塀など74棟が重要文化財に指定されている。

 姫路城に次いで現存建造物が多い城は、二条城の28棟、その次が松山城の21棟で、80棟を超えて現存する姫路城は、その数で他を圧している。むろん、現存建造物が多い分だけ保存修理費はかさむ。

 しかも、それらはすべてデリケートなあつかいが求められる木造建築である。木造建築がいかに傷みやすいか。そのことは姫路城自身の歴史をとおしても知ることができる。

 全国の城が封建時代の遺物と断じられ、各地で破壊の対象となっていた最中の1879年、姫路城は名古屋城とともに、管轄する陸軍省内の意見を受けて永久保存する方針が決まった。とはいっても、わずかな保存費用が一時金として支給されただけで、事実上、放置された。その結果、明治中期に撮影された写真を見ると、大天守の屋根は瓦がずり落ちて雑草が生い茂り、壁は崩落している。大天守と東小天守を結ぶ「イの渡櫓」の西側など、壁も屋根も崩れ落ち、ほとんど倒壊寸前に見える。

 姫路城は江戸時代に大規模な修理が5回、小規模な修理は30回にわたって重ねられ、ようやく維持されてきた。明治になってその流れが断ち切られると、たちまち倒壊の危機に瀕することになったのである。

 現行の1,000円でも、日本の城の入場料ではもっとも高い水準だ、という指摘もある。それは事実だが、建造物がよく残るほかの城とくらべても、3倍、4倍という現存建造物をかかえ、そのいずれもが放置が許されないデリケートな造りだ、ということを考えれば、ほかの城の入場料と比較すること自体がナンセンスだとわかるだろう。

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