ドラマ「VIVANT」でおなじみ「神田明神」の柳の下から札束200万円…80年代に“考察”が飛び交った「KGB資金発見疑惑」とは

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札束を白いタオルで巻いて

 天下の一大事――とばかり、所轄の万世橋警察署に連絡を取ったのは、神田明神の禰宜(ねぎ)、大村忠さんである。大村さんによれば、

「私服の警察官が5、6人やってきましてね。現場を調べたり、写真を撮ってみたり。警察官の立ち会いのもとに、札束も調べてみたんですよ。お札は銀行の封筒に入っていましてね。それを白いタオルで巻き、さらに二重のビニール袋に入れてあった」

 という。手が込んでいるというか、何となくプロの仕業を彷彿とさせる。そして、ここでちょっと面白いのは、札束を埋めた何者かが1万円札をくすねた形跡のあることだ。正確にいうと、合計金額は200万円ではなくて、198万円。一方の束から2万円が抜き取られていたのである。

 万世橋署の担当官の話。

「あの札束はおそらく銀行から下ろしてきたものでしょう。ただし、お札は新品ではなくて、すでに使用されたもの。番号もバラバラでした。1万円札は5年前に“お色直し”されていますから、その前に埋められたと考えるのが当然でしょう。こちらでも、札束の入っていた銀行の封筒なんかを調べてみたが、どうもいまひとつよくわからんのですよ」

1960年代にKGBが開発した“デッド・ドロップ”

 結局、この「198万円」は大判小判と同じように「埋蔵物」として扱われ、2週間にわたり万世橋署に保管されていた。むろんニュースなどで紹介されもしたが、所有者は1人も名乗り出ず、問い合わせもゼロ。現在、飯田橋にある「警視庁遺失物センター」に移されている。

 神田明神の境内では、「そういえば昔、泥棒が隠し場所に困って埋めたという話があった」とか、「いや、道楽息子が家の金を持ち出したのではないか」とか諸説フンプン。平次親分がいたら、それこそ快刀乱麻を断つといったオモムキで、怪事件を解き明かしてくれそうなものだけれど、親分に扮した長谷川一夫や大川橋蔵もすでに亡い。

 が、しかし、公安関係の事情通によれば、「ソ連の情報機関KGBの資金説が有力」という。

「事件のテンマツを聞いて、これはKGBだと思いましたね。彼らの諜報活動のなかに“デッド・ドロップ”方式というのがある。“隠し場所”の意味ですが、機密文書や報酬、工作資金などを、スパイ同士で直接手渡すことを禁じているんです。ひどく古典的な方法ですが、一度どこかへ埋めたり、隠したりして、それを取りに行かせるんですよ。1960年代にKGBが開発した方法で、ああいうお国柄ですから、いまだに教科書通りなんですね」

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