ドラマ「VIVANT」でおなじみ「神田明神」の柳の下から札束200万円…80年代に“考察”が飛び交った「KGB資金発見疑惑」とは
神田明神にはドラマが似合う?
2023年の大ヒットドラマといえばTBS「日曜劇場」の「VIVANT」。主人公の気弱な会社員が実は自衛隊の諜報部隊「別班」の工作員、エネルギー開発をめぐる陰謀、謎のテロ組織、親子の奇縁といった設定は視聴者の考察欲を煽り、SNS上は展開予想の投稿で大いに盛り上がった。
主人公・乃木憂助の自宅が神田明神の近くにあることも、思わせぶりな設定の1つだった。憂助が別班の緊急招集を知る方法は、神田明神の小さな祠に赤の別班饅頭が置かれること。物語が進むと、祠と饅頭は緊急招集以外の連絡事項も伝えるようになった。
神社と諜報部隊とは意外な組み合わせだが、神田明神はかつて奇妙な“埋蔵物”の発見で注目された“前歴”がある。1989年2月28日、植木職人が柳の下から掘り返したのはビニール袋に入った100万円の札束2つ。その埋め方からして、ソ連の情報機関「KGB」の隠し資金ではないかという“推測”が浮上していたというのだが――。
(「週刊新潮」1989年3月13日号「神田明神で発見された『KGB資金』」をもとに再構成しました。文中の役職等は掲載当時のままです)
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【レア写真】何の変哲もない柳の木なのに…根元から約200万円の札束! 騒動になった当時の現場写真
「柳の下の聖徳太子」に職人仰天
かの銭形平次ゆかりの「神田明神」に事件発生である。野村胡堂の原作では、平次親分はその明神下の長屋で女房お静と所帯を持っている、という設定だが、それはともかく、事件が発生したのは2月28日。植木職人が社殿北側にある柳の根元を15センチばかり掘り起こしたところスコップに何かぶつかったというのである。
石でもないし、木の根とも違う。その日、境内で作業に当たっていた造園会社の責任者がこう語る。
「あの日は、私どもの職人7人が明神様に出向いたんです。柳を移し替える仕事を始めたのは午前9時半。2、3日前に雨が降っているせいか、土に湿り気があり、作業のしやすい状態でした。すると間もなく、10メートルばかり離れた所で作業をしていた仲間の1人が、『おうい、これを見ろ』と、右手にビニール袋をかざしているんです。『何だ、何だ』とそばに行きましたら、それが札束だったいうわけですよ」
札束は2つ。それぞれ100万円ずつ、紙の帯が巻いてあった。そして、注目すべき点は現在使われている福沢諭吉の1万円札ではなく、聖徳太子の旧券ばかりだったのだ。
「この仕事を続けているが、1000円札一枚掘り当てたことはない。それが朝一番の仕事で札束にぶつかったわけですからね。正直いって驚きましたよ」
と、職人たち、「柳の下の聖徳太子」に腰を抜かした格好だ。これが「平次捕物帖」ならば、「親分、て、てえへんだ!」ということになるのだが、ともあれ、札束を抱えて明神様の社務所へ駆け込んだのである。
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