ミャンマーの「無法地帯」から“約7000人保護”も…美談と呼べない“大混乱”が続く特殊すぎる事情

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未曾有の約7000人保護に現場は混乱

 タイが抱える事情はわかりやすい。詐欺拠点へ向かう“ゲートウェイ”として使われた結果、海外観光客の数が減少してしまったのだ。特にお得意様の中国人観光客が激減し、政治の面でも中国との関係を深めたい現状を踏まえると、解決姿勢を示す必要があった。ただし、約7000人が解放されるという前代未聞の事態に、現場では混乱が生じている。

 タイでは人身売買の被害者を面談で認定し、外国人の場合は認定後のシェルター滞在中にタイ当局と在タイ公館の手続きを行って本国送還となる。先に保護された日本人少年のうち最初の1人は、タイで「人身売買被害者」と認定された初の日本人 だ。ただし、このプロセスを約7000人に行うには、さすがに時間と場所が必要となる。さらに、たとえこのプロセスを急いだとしても、送還されなければシェルターが満杯になってしまう。

 タイ当局は各国の在タイ公館に迅速な送還手続きを呼び掛けているが、公館側も 詐欺に従事させられた「人身売買被害者」と、拠点運営に関わった「犯罪者」を確認する必要がある。また、アフリカ諸国など在タイ公館がない国の収容者については、本国の協力を仰ぐこと自体が困難なケースもあるという。そうした複合的な理由により、ミャンマーとタイの間で深刻なボトルネック状態が生じているのだ。

 一方で収容施設では、ミャワディ全体が“兵糧攻め”にされている事情もあって、収容者用の食糧や物資が不足している。軍事キャンプの容量も限界に達し、衛生・医療施設が不足する劣悪な環境に陥りつつあるという。この状態が長く続けば、被害者たちは地獄を見続けることになるため、一刻も早い対応が求められている。

デイリー新潮編集部

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