ミャンマーの「無法地帯」から“約7000人保護”も…美談と呼べない“大混乱”が続く特殊すぎる事情
短期間で約7000人の保護は史上初
今年1月に発生した中国人俳優の救出劇をきっかけに、ミャンマーとタイの国境付近では、詐欺拠点に監禁されていた外国人の解放が相次いでいる。日本人少年2人の保護に続き、2月27日には日本人の可能性がある男性の保護も報じられるなど、日本も他人事ではない状況だ。
【写真】テーブルに突っ伏したまま動かず…1年以上監禁されていた中国人少年の衝撃的な姿
新たに保護された男性が収容されたのは、現地で対応にあたる少数民族武装勢力「国境警備隊(BGF)」の軍事キャンプ。BGFは1月から現地で摘発を進めており、先週の時点でこれまで解放された外国人7141人を傘下の軍事キャンプなどに一時収容している。国籍別の上位は中国(4860人)、ベトナム(572人)、インド(526人)で、日本人は確認されていないが、保護された男性が日本人だった場合は現状で唯一の日本人収容者となる見込みだ。
収容者はこのあと、ミャンマーからタイへ合法的に入国し、母国の政府が用意した手段で送還という流れになるが、短期間で約7000人の保護は史上初。収容先はすでに満杯となり、物資の不足やスムーズに行われないタイへの入国といった事情から、環境が悪化しているという。
なぜ約7000人も解放されたのか
ミャンマーの東側で国境を接する国はタイとラオス、中国の3カ国。1月からタイとの国境沿いにあるカレン州ミャワディの詐欺拠点が集中的に摘発され、2月5日からはタイからミャワディへの電気、ネット回線、燃料の供給を遮断するという“兵糧攻め”も始まった。2月下旬にはBGFが悪名高い「KK園区」なども捜索している。
早期の強制捜査といった措置がなかった理由は、ミャンマーの政情不安にある。政府の国軍と少数民族武装勢力との内戦が続いた結果、カレン州を含む国境エリアは武装集団の支配が強い。これは国境沿いに無法地帯が形成された理由にもつながる。
ミャワディの場合は、実質支配しているBGFが中国企業と協力して街の開発を行った際、犯罪組織まで進出してきたことで詐欺拠点が誕生した。BGF側はそれを知りながら利益を得ていたという疑惑があるものの、BGFの幹部は否定。今回の摘発で否定の意思を強く示し、日本メディアの取材にも対応しているが、依然として様々な見方がある。
タイとミャンマーに今回の摘発を強く促したのは中国だった。特殊詐欺と人身売買の国内被害が甚大という深刻な事実がその理由だ。一方、広域経済圏構想「一帯一路」で重要なハブとされるミャワディで、本来は正しく使われるべき開発資金が“詐欺の街づくり”に流れたことを消し去りたいのではないかという指摘もある。
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