阿部監督「70億円補強」で検証 「巨人“大物”大量獲得の年はV逸」のジンクスは本当か

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暗黒時代

 2002年、そのバトンを受けた原辰徳監督は、当初、「現有戦力で戦うことこそ監督の使命」と、大型補強には否定的だった。就任1年目の2002年シーズンにFAで獲得したのは中日から前田幸長投手のみ。松井秀喜外野手が50本塁打を放つなどの活躍もあり、現有戦力中心で見事日本一になった。松井は翌シーズン、NYヤンキースにFA移籍。その穴を埋めるべく獲ったのがヤクルトの主砲、ロベルト・ペタジーニ内野手である(結果は3位)。

 その後、暗黒の堀内監督時代(2004年にはダイエーから小久保裕紀内野手、近鉄からタフィ・ローズ外野手を獲得するが3位に終わる)を経て、2006年シーズンから再び指揮官となった原監督は一転、長嶋監督ばりの大型補強に乗り出す。そして、2015年までの第2次政権10年間で2007~2009年、2012~2014年と2度の3連覇を含む6度の優勝を果たす。この間、「大補強」と騒がれた主な補強と、シーズン成績について振り返ると、

●2006年 李承ヨプ(イ・スンヨプ)内野手(ロッテ)、野口茂樹投手(中日=FA)、豊田清投手(西武=FA)→4位
●2007年 小笠原道大内野手(日本ハム=FA)、門倉健投手(横浜=FA)、谷佳知外野手(オリックス)→リーグ優勝
●2008年 アレックス・ラミレス外野手(ヤクルト)、セス・グライシンガー投手(ヤクルト)、マーク・クルーン投手(横浜)→リーグ優勝
●2012年 村田修一内野手(横浜=FA)、杉内俊哉投手(ソフトバンク=FA)、デニス・ホールトン投手(ソフトバンク)→日本一
●2014年 大竹寛投手(広島=FA)、片岡治大(現・保幸)内野手(西武=FA)、井端弘和内野手(中日)→リーグ優勝

「この時期の大補強は効果があったように見えます。当時の巨人は大物選手が次々と加入する一方、打者では阿部慎之助(捕手)、坂本(勇人・内野手)、投手では内海(哲也)、菅野智之など、生え抜きで軸となる選手がどっしりしていました。だから加入選手も“浮く”ことは少なかった。理想的な形と言えます」(前出・夕刊紙記者)

初めてFAで3選手を獲得するも…

 その後、監督の座に付いたのは高橋由伸だった。2年目の2017年には山口俊投手(DeNA)、陽岱鋼外野手(日本ハム)、森福允彦投手(ソフトバンク)と球界で初めてFAで3選手を獲得して話題となったが、4位に沈む。

 2018年オフ、原が3度目の監督就任。2次政権時代の成功に味をしめ、毎年のように補強に動く。「FAをしたら、参加するのがジャイアンツですから」との“名言”を残したことも。が、

「2019年シーズンこそ丸佳浩(外野手、広島)と炭谷銀次朗(捕手、西武)をFAで、中島宏之(内野手、オリックス)や岩隈久志(投手、マリナーズ)も獲得し、リーグ優勝に輝きましたが、2021年にはDeNAからFAで獲得した梶谷隆幸(外野手)、井納翔一(投手)が機能しなかった。シーズン途中に日ハムから不祥事を起こした中田翔(内野手)を獲得しましたが、結果は3位。全権監督でもあったため、獲得の責任も自分にある。監督の補強構想にオーナーは協力的ではなくなりました。“補強したいと思っても球団がなかなか資金を出してくれない”と珍しくボヤいていました。結果、2023年シーズンで契約途中での退任を余儀なくされました」

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