「赤いきつね」CM騒動 「性的」と騒ぐ人に東洋水産から「毅然とした一言」があってもよかったのでは
東洋水産「マルちゃん 赤いきつね」のアニメCMで、女性キャラが食事するシーンが「性的だ」として一部で批判の声が上がった問題。過去の類似事例を見てみると、クレームを逆手に取った戦略で成功したケースも。ライターの冨士海ネコ氏が分析する、今回の炎上の根本原因とは――。
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東洋水産「マルちゃん 赤いきつね」のウェブCMが連日ネットニュースを騒がせている。
マルちゃんといえば90年代に流れていた、ホットヌードルの「初めての、H」というキャッチコピーのCMを思い出してしまう世代である。セーラー服のリボンをほどき差し出す少女。受け取るのは映画「ターミネーター2」で一躍人気になったエドワード・ファーロング。ドキドキする演出の数々に、親の前で見る時はちょっと気まずさを感じていた。
カップ麺での「思わせぶり」CMといえば、広瀬すずさんのセリフが物議を醸した、2015年の明星食品「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」を思い出した人もいるだろう。制服姿の広瀬さんが、唇を突き出し「ぶっちゅう~」とマヨネーズをカップ焼きそばの上に絞り、カメラ目線で「全部、出たと?」と尋ねる仕立てには批判が起きた。当時の企業担当者によれば「気持ちが全て相手に伝わった?」という意味のせりふだったというが、ほどなくして「好きな人、おると?」に変更されたバージョンが使用されることに。元から素材は2種類あったというが、苦情が入ったことも少なからず影響したようである。
翻って今回の「赤いきつね」に、性的な意図はあったのかなかったのか。現時点では、企業からも企画した広告会社からも正式な声明はない。私も含め、いくつかのメディアが質問を送ったものの、回答を得られたところはまだないようだ。
否定したところで反発している人には通じないという判断かもしれないけれど、無回答という姿勢は残念に感じてしまった。
たしかに「女性蔑視だ」あるいは「バカな女たちは無視するに限るという姿勢の表れだ」と、外野が勝手に盛り上がってしまっている印象は拭えない。日本は「察する」文化だというが、CMを見ては「察し」、無回答という企業の思惑を「察し」、自分と反対意見を持つ人間の属性を“フェミだ”“弱者男性だ”と「察し」たことで拡大した、日本人の察する能力が高過ぎるゆえの騒動に見える。
個人的には、性的かそうでないかというより、企業としての覚悟があるのならまずは受け止めたい、と思っていた。というのは、以前にも「性的」という苦情によって放送素材の変更や中止を迫られた企業が、ブレない対応によってかえって好感を得たといえそうなケースもいくつかあるからだ。
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