“しれっと入る人工甘味料”問題… 新発売「ペプシの原液」はペプシコーラの味と違う

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なぜ人工甘味料を入れたのか

 なぜ「原液ペプシ」には人工甘味料が入っているのでしょうか。飲料メーカーをはじめとする食品メーカーが、人工甘味料を使用する理由はさまざまです。低カロリーを謳えることやコスト削減といったメリットに加え、用途によっては味の向上につながると考える企業もあります。

 今回「おうちドリンクバー」のシロップ4種すべてに人工甘味料が使用されていますが、元の炭酸飲料に人工甘味料が含まれているものはありません。つまり、サントリーは濃縮タイプの飲料において、人工甘味料を使用することでより味が良くなると判断しているのかもしれません。実際、サントリー食品インターナショナルはデイリー新潮編集部の取材に「濃縮タイプ飲料の最適な美味しさを追求するために使用しています」と回答しました。

 この説明を信じるかどうかは読者の判断に委ねますが、ペプシコーラの原液に関しては、別の事情があると私は考えています。ここから先はあくまで憶測になりますが、サントリーがペプシコーラのマスターフランチャイズ権(マーケティングおよび製造販売総代理権)を所有しているとはいえ、ペプシブランドのオーナーである米ペプシコの意向には従わざるを得ない、という点は重要です。

 しかし、これだけでは「サントリーのブランドたるCCレモンやデカビタCの原液にも人工甘味料が使用されている理由」が説明できません。そこで仮に「おうちドリンクバー」シリーズが、ペプシコーラの原液を導入することを前提に開発されたとすれば、どうでしょうか。すべての濃縮タイプ飲料に人工甘味料を使用するという決定はサントリーがしたように見えますし、日本の消費者から米ペプシコへ批判が向かうことも避けることができます。

 それではなぜ、米ペプシコが人工甘味料を入れるのかについてですが、これは明確にはわかりません。業務用と家庭用の商品は明確に別けておきたいのか、それとも原液をリバースエンジニアリング(成分や製造プロセスを解明する手法))されにくくするためなのか。ただこの件に関しては、私はサントリーが人工甘味料を積極的に使用したとは考えていません。むしろ色々な制約がある中で、日本の消費者が世界より美味しく飲めるよう、可能な限り努力された結果なのだと考えています。

 この事を嘆いても仕方が無いので、私オススメの「人工甘味料が比較的気にならずに飲める、ペプシコーラ原液の飲み方」を御紹介致します。それは豆乳で割ることです。実はクラフトコーラをはじめとしたコーラシロップというのは乳製品との相性が良いのですが、個人的には牛乳よりも豆乳の方がより相性が良いと思っています。豆乳の風味とまろやかさで人工甘味料の後味がマスキングされペプシの味も際立ちますので、皆さんも是非試してみてください。

 サントリーの公式サイトやSNSには、「炭酸水で割る以外にもバニラアイスやかき氷にかけたり、他のドリンクに混ぜたりして楽しんで下さい」という旨のアナウンスがあります。想像力を働かせて自分好みのオリジナルのドリンクを作ることはとても楽しく、これがシロップタイプを購入する醍醐味です。今後も私は「どうなったらより人工甘味料の風味が気にならなくなるか」をテーマに、色々と工夫しながら楽しみたいと思います。

忍び寄る人工甘味料の“サイレント添加”

 ペプシの原液に関わらず、最近はゼロカロリーと謳っていない清涼飲料水にも人工甘味料が"しれっと"使われることが多くなったと感じます。私は目についた新しい飲み物を色々と買いますが、いざ飲んでみると人工甘味料が入っていたなんてことがよくあります。そのため、食品ラベルを確認できない自動販売機で買う回数は減りました。

 こういったことが重なり、飲料メーカーを手放しで信じられなくなった方も少なくないのではないでしょうか。前述のとおり、人工甘味料の使用はコスト削減など、メーカー側のメリットも数多くあります。ただ、その事をきちんと伝えずに販売してしまうことは、長期的にみてその飲料メーカーの信用を著しく落とす行為であり、お互いに良い話ではないように思います。人工甘味料が含まれているかどうか、消費者が簡単に識別できるような仕組みを業界で作るべきではないでしょうか。

 戦後の日本では砂糖が貴重であったため、清涼飲料水には人工甘味料単体もしくは砂糖と併用されていた時代が永らく続きました。その後国が豊かになり砂糖が自由に使えるようになると、「全糖」と称される飲料が登場しました。画像は三ツ矢サイダーですが、このようにラベルや瓶に全糖と表記することで、人工甘味料が入っている他品と区別していたのです。このような、消費者にも簡単に識別できるような仕組みが現代にもあると良いと思います。

 時代によって、清涼飲料水の在り方も変わっていきます。もしかすると今後は昔のように、天然甘味料と人工甘味料のハイブリッドが主流になるのかもしれません。消費者にとって決して良い時代とは思いませんが、それを取捨選択する権利だけは、充分消費者側に残しておいていただきたいものです。

空水りょーすけ
コーラ総合情報サイト「コーラ倶楽部」代表。15年ほど前にコーラ趣味を志し、現在まで様々なコーラを飲んできました。「コーラとは何か?」という疑問の答えを見つけるために活動しています。X(@soramizuryosuke)

デイリー新潮編集部

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