「習近平」側近が続々「汚職失脚」の衝撃 人民解放軍が目指す「台湾侵攻」にも影響か
国防相が2代続けて失脚
このように軍需産業のトップ10企業の最高幹部が軒並み腐敗に手を染めている実態がわかるが、贈賄側だけでなく、収賄側の捜査もここ数年、進んでいる。
それを端的に表しているのが2023年末、全国人民代表大会(全人代=国会に相当)常務委員会が軍選出の全人代委員(議員に相当)9人の解任を発表したことだ。全人代委員は通常、任期5年間で、日本の衆議院と違って途中での解散はないので、任期途中での解任はよほどのことがない限りありえない。解任された9人の階級はすべて将軍で、うち3人は最高階級の上将だけに、軍内が腐敗の巣窟と化していると言えなくもない状態だ。
国防相も2代続けて腐敗問題で失脚している。まず、2018年3月から23年3月まで5年間の任期を全うした魏鳳和・上将が、退任後も軍最高幹部7人で構成する中央軍事委員会の委員に留任していたにもかかわらず長期にわたって動静が不明となっていた。そして2024年6月27日、後任の李尚福・国防相とともに、収賄や規律違反で、共産党の党籍をはく奪されたのだ。さらに、2人は軍の最高位の階級である上将の位も取り消され、軍内トップセブンから一転して「犯罪者」の烙印を押され、獄中の人物となってしまった。国防相経験者2人が同時に処分されるのは中国人民解放軍の建軍以来初めてだけに、極めて異例と言わざるを得ない。
両氏とも戦略ミサイルや軍事衛星を扱うロケット軍や中央軍事委装備発展部のトップとして、前述の中国航天科学技術集団や中国航天科学工業集団との関係が深く、兵器や装備の発注などに絡んで、多額の賄賂などを受け取っていたとされる。
中央軍事委員会の機能不全
このような軍の腐敗深刻化の事態に対して、軍トップの習近平国家主席(中央軍事委主席)は2人の処分発表直前の6月17日、「中国共産革命の聖地」ともいわれる陝西省延安市で、中央軍事委員会政治工作会議を開催し、「わが軍が政治上直面する試練は複雑だ」と危機感を表明。「軍に腐敗分子の隠れ家があってはならない」として、「反腐敗」の徹底を強く指示した。
しかし、それから半年も経たずして、習氏は新たに軍トップセブンの最高幹部を処分せざるを得なくなる。中国国防省は2024年11月28日、中国軍内で共産党の思想教育を担う政治工作部主任委員を兼務する苗華・上将が「重大な規律違反」の疑いで調査を受けていることを明らかにした。苗氏の動静は10月7日に新疆ウイグル自治区で開かれた記念式典への出席を最後に途絶えており、いまも取り調べを受けているとされる。苗氏の失脚で、本来ならば7人で構成される中央軍事委員会は、李氏の失脚も合わせて5人となっており、軍最高指導機関としての機能が果たせない状態になっているとみられる。
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