金融正常化までは「14年かかる」…日銀「植田総裁」が直面する“異次元緩和のツケ”とは

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次期総裁にふさわしい人は

 では、そうした難しい舵取りを担うには、どういう人物がふさわしいのでしょうか。少し気が早いのですが、2028年には日銀総裁人事が控えています。総裁に求められる役割を私からお話しするのはおこがましいものの、私見を申し上げると、1979年から87年までFRBの議長を務めたポール・ボルカー(1927-2019)のような人がふさわしいと思います。その資質としては、

1.中央銀行の役割に深い理解があること
2.内外の経済を俯瞰する力があること
3.政治との一定の緊張関係を維持しながら必要な措置を果断に実行できること

 ボルカーはアメリカの高インフレを抑え込んだ人物として知られています。しかし当時レーガン政権からは金利の引き下げ圧力を度々受けていました。86年のFRBの定例理事会では副議長らが反旗を翻し、公定歩合引き下げが決定されてしまいますが、ボルカーは烈火のごとく怒り、ただちに辞任すると宣言。慌てた副議長らが議決を撤回するということがありました。まさに「闘う公僕」でした。

 日銀生え抜きか、財務省出身か、というキャリアの問題はあまり重要ではなく、上記の3つについて理解をしていることが重要だと思います。そうした「スーパーマン」がいるかといえば、なかなか難しいかもしれませんが、総裁を含め日銀は、市場を尊重しつつ、国民の理解も得ながら、「通貨の信認を確保する」という本来の役割にまい進してほしいと思います。

山本謙三
日本銀行元理事、オフィス金融経済イニシアティブ代表
1954年生まれ。76年日本銀行入行。98年、企画局企画課長として日銀法改正後初の金融政策決定会合の運営に当たる。米州統括役、決済機構局長、金融機構局長などを経て、2008年、理事。2012年NTTデータ経営研究所取締役会長。現在は講演活動や寄稿を中心に活動中。

デイリー新潮編集部

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