バンコクのスーパーでは「チョコモナカジャンボが500円超」…「円安バーツ高」で一変した「タイ旅行」の実態

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もう一つの変化

 帝国データバンクの発表によると、日本国内で2025年の4月までに値上げとなった品目は6000にものぼり、これは、2024年比で、6割増ペースだという。もっとも、2023年から値上げ傾向は顕著になっており、若干、値上げに慣れてしまった自分がいる。2022年までは、スーパーへ買い物に行くと一回3100円ほど支払っていたのだが、現在は3600円ほどになっている。収入は増えたわけではないが、「まぁ、そんなもんか」と諦めの境地に入るほか、「世の中値上げが普通のことだ」という感覚になっている。まぁ、デフレ時代が長すぎたのだ。

 そして、もう一つの変化は、2023年と2024年に仰天していた外国での値上げも平静と受け入れられるようになってしまったことだ。筆者(中川淳一郎)は現在タイ・バンコクに滞在中である。新型コロナが発生した2020年以降難しくなっていたが、2023年2月から5月までタイを4年ぶりに訪れ、物価の上昇ぶりに心底仰天した。そして翌2024年も同様だ。日本よりも物価上昇の速度が急激に感じられたのである。なにしろ、元々80円ぐらいだったタイのラーメンが200円になっていたのである(それでも十分安いが)。

日本と同等か

 とりわけ、タイにおけるファストフードの高価格化傾向は顕著で、スターバックスでフラペチーノを頼もうものなら800円はかかってしまう。すでに日本と変わらない価格なわけだが、タイの若者は平然とこれらを購入し、オフィスに向かっていく。この姿には衝撃を受けた。ファストフード店もなかなか高いが、現地の人と欧米からの観光客には人気だ。バーガーキングでベーコンワッパーJr.のセットを買うと1290円。ワッパーJr.セットは600円だ。アメリカ系ファストフードは軒並み高い。マクドナルドのセットも700~1100円ほどする。Grab(Uber Eats的なサービス)の注文も次々と入っていた。

 2000年には、100バーツ札(2000年は約380円)は日本円における1000円札のような存在だった。これを出せば2食分のメシ代とそれに伴うソフトドリンク代となった。成長著しいタイと、停滞する日本の経済成長度合いを比較しても、2023年はせめて800円ほどの価値を持つものかと思っていた。だが、正直100バーツ札1枚の感覚は500円玉である。さらに円安傾向もあって2023年は100バーツ=約420円、現在は約445円となっており、もはやタイでは地元民しか行かないような店を除き、飲食代は日本と同等ないしは日本よりも高いと感じられる。

チョコモナカジャンボ510円

 スーパーで売っている食品の価格にしても、日本では298円ほどのハムが800円、400円のチーズが1100円など。当然国産のスナック菓子や調味料は安いが、輸入品はかなり高い。日本からのものもある。アイスは以下の通り。

 ラムネ氷(スガキヤ):180円
 バニラモナカ(フタバ食品):180円
 チョコモナカジャンボ(森永製菓):510円
 あずきバーマルチパック(井村屋):730円

 チョコモナカジャンボは実にデラックス価格である。日本でこの値段で買う人はなかなかいないのでは。ちなみにタイ米は5kg780円ほどで、ジャポニカ米は5kg1250円ほどだ。日本では米の高騰が問題化しているが、当地ではそれは無縁だ。

 そして、値上げも容赦なく進み、客はそれを受け入れている。アイリッシュパブのハッピーアワーで一番安いタイガービール(シンガポール)のジョッキは、2023年は1杯420円だったが、2024年に460円に、そして2025年は580円にまで上昇した。だが、冒頭で値上げに対して諦めの境地に入った、と述べたように、こうした状況をもはや「普通のこと」として解釈するようになってしまった。日本の物価高がもたらした諦観を海外でも受け入れたのである。

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