21万トンの米はどこに消えた? 備蓄米を放出しても「適正価格に落ち着くまで2年近くかかる可能性も」

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「価格低下の効果は極めて限定的になるはず」

 元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏の話。

「農水省は今回放出した分を1年後に買い戻すと言っています。こんなやり方は前代未聞。備蓄米は放出するけれど、それが市場での供給増にはつながらないようにして、米価の下落を避けたいということです。これでは価格低下の効果は極めて限定的になるはずです」

 現在スーパーなどで売られているのは主に24年産のコメである。その生産量は前年より18万トン増えたものの、JA全農などの集荷業者が買い集めたコメは前年より21万トン少なかった。ちなみに、

「農家が生産したコメがJAを経て消費者に届く割合は約5割とされ、昨秋以降はもっと下がっています。残りは民間の業者を経てスーパーなどの小売店や中食、外食に行ったり、農家が直売したりします」(ジャーナリストの山口亮子氏)

21万トンの米はどこに行った?

 果たして消えた21万トンのコメはどこに行ったのか。それについて江藤農水相は、

「どこかにスタック(滞留)していると考えざるを得ない」

「主食のコメがマネーゲームの対象になってしまう」

 などと会見で述べている。

 この点、坂本元農水相に聞いても、

「今まで買わなかった人たちがどんどん買い出した。投機の対象になってしまった、と。流通で不透明な部分があった。それを私たちが判断できず、これまでずっと高値が続いてきたのだと思います」

 やはり同様の認識を示すのだ。実際、中国人までもがコメの買い付け競争に参入している、などと報じたメディアもあったが、

「21万トンが全てそうした原因で不足している、というのはどう考えても説明がつかないと思います」(大手卸関係者)

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