21万トンの米はどこに消えた? 備蓄米を放出しても「適正価格に落ち着くまで2年近くかかる可能性も」
農水省を方針転換させることができた理由
江藤拓農水相が備蓄米放出の準備を表明したのは1月24日。同日、日銀は金融政策決定会合を開き、2024、25年度の物価見通しを上方修正していた。
「日本全体の消費者物価上昇の大きな要因がコメ価格の高騰であるのは明らかです。こうした状況を受け、石破首相の側近の赤澤亮正経済再生担当相が江藤農水相に放出準備の開始を前倒しして公表するよう要請していました。もちろん、最終的に備蓄米放出を決断したのは石破首相です」(政治部記者)
石破首相は農政に詳しく、08年から09年にかけては麻生太郎内閣で農水相も務めている。
「その時、石破首相は減反の判断を農家に委ねる『選択制』導入の検討を表明したのですが、JA全中や農林族の反対に遭って頓挫。こうした経験から首相はかねて農政全体に批判的な視点を持っており、だからこそ備蓄米放出に慎重な農水省を方針転換させることができたのでしょう」(同)
「適正価格に落ち着くまで2年近くかかる可能性も」
備蓄米放出によってコメの店頭価格は下がるのか。
先の秋葉氏は、
「下がるでしょう。ウチにも農家から、今年より安値でいいから次の新米契約をしてほしいという連絡が何件か来ていますが、価格はもっと下がると見ているのでまだ契約はしていません」
一方、米流通評論家の常本泰志氏はこんな見方。
「備蓄米はスーパーではブレンド米として売られる可能性が高いので、新潟県産コシヒカリのような単一銘柄の店頭価格への影響というのはかなり限定的だと思います。5キロ3000円前後の適正価格に落ち着くまで2年近くかかる可能性もあるでしょう」
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